【プレスリリース】何百万人もの子供たちが戻る学校に石けんや水がない~WHOとユニセフの報告書で改善の遅さが明らかに

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WaterAid Japan
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25 August 2020
In
水/Water, 衛生習慣/Hygiene
Mphatso Kika, 36, caregiver, conducting lessons, Masenjere Early Childhood Development Centre, Zomba, Malawi, July 2019.
Image: WaterAid/ Dennis Lupenga

新学期に学校に戻って来る子供たちが教室で目にするのは、人との距離を保つことに配慮した机の配置や、手洗いの大切さを呼びかけるメッセージなど、以前とはかなり異なる光景かもしれません。しかし、世界中の何百万人もの生徒と教師たちが通う学校では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する最も基本的な予防策である、石けんと水で手を洗うことさえできない状況が続いています。

私たちは、すべての子供たちが清潔な水と適切なトイレを使うことができ、手を洗うための環境が彼らの学校に整っていることを目指しています。しかし、世界保健機関(WHO)とユニセフが8月13日に発表した新たな報告書(*)は、そのための改善の進展が驚くほど遅いことを示しています。

(*)
The WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme (JMP) 2020
Progress on drinking water, sanitation and hygiene in schools: special focus on COVID-19 

この新たな報告書は、2015年から2019年までの改善に焦点を当て、次のような数字を明らかにしています。

  • 世界では、31%の学校で、基本的な水へのアクセスがありません。とくにサハラ以南のアフリカでは、56%の学校で基本的な水へのアクセスがありません。
  • 世界では、37%の学校に適切なトイレがありません。とくにサハラ以南のアフリカでは、53%の学校に適切なトイレがありません。
  • 世界では、43%の学校に手洗い用の石けんと水がありません。とくにサハラ以南のアフリカでは、74%の学校に手洗い用の石けんと水がありません。

報告書によると、世界の43%の学校には、手洗いのための石けんと水がありません。サハラ以南のアフリカでは、現在までに、報告されているだけで、新型コロナウィルスの感染者が100万人に達し、何千人もの命が失われています。しかし、この地域の約4分の3(74%)の学校には、手洗いのための石けんと水がありません。

WHOとユニセフはさらに、新型コロナウィルスによる健康と人道危機のリスクが最も高いとされる60カ国のうち、4分の3の国では、新型コロナウィルスの世界的な流行(パンデミック)が始まった時点で手洗いができない状況にあったと強調しています。新型コロナに直面して、世界はこれまでにないほど、感染症の拡大予防のため、手洗いなどの手指衛生が重要であると再確認しました。しかし、深刻な状況に置かれた何百万人もの生徒や教師はその対策をとることができず、彼らの教育の現場が感染拡大のリスクにさらされています。

学校に清潔な水や適切なトイレ、手洗い設備がなければ、子供たちは水をくむために離れた場所まで歩いていったり、茂みの中で用を足したりするしかありません。そのために授業を受けられなくなることもあります。プライバシーが確保された適切なトイレなどがないために、月経中の女子生徒が学校を休むことも多く、そのために退学してしまうこともあります。世界の31%の学校では敷地内で清潔な水が使えず、37%の学校では生徒用の基本的なトイレがないのです。

学校でコップに水をくむジャン・ボスコ・トワゼイマナさん。この学校には、雨水を集める設備がありますが、必要な水量を集めることはできません=ルワンダ東部ブゲセラ、2018年
学校でコップに水をくむジャン・ボスコ・トワゼイマナさん。この学校には、雨水を集める設備がありますが、必要な水量を集めることはできません=ルワンダ東部ブゲセラ、2018年
Image: WaterAid/ Jacques Nkinzingabo

ジャン・ボスコ・トワゼイマナさんは、ルワンダ東部のブゲセラにあるグループ・ショレール・キブンゴの生徒です。この学校には、雨水を集める設備がありますが、必要な水量を集めることはできません。

「トイレの後、手を洗うための水はありません。なので、下校前に手を洗うことはありません。家に帰っても、やはり手は洗いません。水がないからです」

新型コロナウイルスが拡大した際、多くの学校が休校になりました。多くの子供たちがオンラインで学習を受けるようになりましたが、開発途上国では、すべての学齢期の子供たちが教育を受けることができず、さらに取り残される危険があります。新型コロナの感染拡大によって、教育を受け続けられる子供たちと、教育を受けられない子供たちとの間の格差は、さらに拡大していくかもしれません。

学校は、正しい衛生習慣を学び、身に付ける場所です。生徒たちが家庭でもその衛生習慣を実践することで、家族全員が感染の危険を避けることもできます。ウォーターエイドは各国の政府に対し、学校の水・トイレ・衛生の改善を現在および新型コロナ後に最優先に取り組むべきこととし、すべての学校に適切な手洗い設備を設置するための予算を確保することを求めています。

いまだに多くの学校には、清潔な水や適切なトイレがありません。それは安全で質の高い教育を提供することが困難であることを意味します。援助団体や開発にかかわる機関は、この危険な状況をなくすために取り組まなければなりません。

ウォーターエイドのシニア水・衛生マネージャー、アダ・オコウィリアムスは次のように話しています。

「教育は貧困から脱出するために欠かせないものですが、水・トイレ・衛生の環境が整っていない学校は、何百万人もの子供たち、特に女子の健康と学習機会を脅かしています。子供たちは、健康を維持するか、教育を受けるか、という選択を迫られるべきではありません」

「すべての学校に、生徒たちが安全に過ごせるようにするために必要な水、トイレ、石けんを整備するための取り組みの進展は非常に遅れています。新型コロナの感染拡大を受けて、水・トイレ・石けんという衛生の基本を整えることを優先しなければなりません。子供たち、教師、そして地域社会を守るため、各国政府が、すべての学校に石けんときれいな水を供給するための資金を提供することを期待します」