清潔な水と衛生設備が、HIVとともに生きる人々の治療に果たす役割

Posted by
Kasumi Tachibana
on
30 November 2014
In
日本, Water

HIV(ヒト免疫不全ウィルス)の管理と治療においては、清潔な水と基本的なトイレ設備の利用が欠かせないにもかかわらず、このことが軽視されている実態が、ウォーターエイドおよびアフリカにおいて保健分野で活動する非営利組織SAfAIDs*による最新の報告書で指摘されています。

12月1日は世界エイズデー。その日を前に、ウォーターエイドとSAfAIDsが報告書「アフリカ南部におけるHIVと水・衛生設備・衛生習慣改善の統合アプローチ:ギャップおよびニーズ評価(An integrated approach to HIV and water, sanitation and hygiene in Southern Africa: A gap and needs assessment)」を発表しました。それによれば、世界でHIVとともに生きる人々の70%はサハラ以南のアフリカに居住し、その数は約2500万人に達しています。

清潔な水は、HIVとともに生きる人々が健康を保ち、抗レトロウィルス薬(ARV)を服用し、よい衛生状態を維持して感染症を最小限に抑えるために必要不可欠なものです。しかし、サハラ以南の住人たちのうち35%は清潔な水を利用できず、基本的なトイレ設備を持たない人は70.4%にのぼります。このため、多くのHIVとともに生きる人々が慢性的に下痢を発症し、自らの、そして家族の健康維持が大変難しい状態になっています。下痢を発症した場合、栄養分を食事や薬から取り込む身体の能力が低下し、ARVの効果が薄れてしまいます。

アフリカ南部に暮らすHIVとともに生きる人々のおよそ90%は下痢に苦しんでいます。そのうちの88%、つまり大多数は、危険な飲み水、不適切な衛生設備、不十分な衛生教育(習慣、行動など)などが引き金となり下痢を発症しています。アフリカ南部の10か国のうち9か国は、世界でも群を抜いてHIV感染率が高い地域です。

ウォーターエイドのCEO バーバラ・フロストはこう言います。 「医学研究がこの30年で大きな進歩を遂げた結果、かつてHIVは『死の宣告』と受け取られがちでしたが、現在は管理可能な状態へと変わりました。しかし、どれほどHIVに関する教育が浸透し、抗レトロウィルス薬が広く行きわたったとしても、重点的な取り組みとして、HIV/エイズとともに生きる人々が体を洗って身の回りを清潔に整えるために、きれいな水や基本的なトイレなどの手段を提供できていないならば、まったく本末転倒と言えます。こういった基本的なサービスがあれば、たとえHIV感染率が高い場所でも、人々は健康的で尊厳を保ちながらより生産的な暮らしを送ることができます」

報告書の評価は、レソト、モザンビーク、スワジランド、ザンビアにおいてHIVとともに生きる人々に関するものです。スワジランドではHIVの感染率は26.5%で、これは世界で最も高い数値のひとつです。レソトは23.1%。ザンビアが12.7%、モザンビークが11.1%です。

水・衛生設備の利用率はそれぞれの国で大きく異なりますが、調査によれば4か国ともに、多くの家庭で水くみの際に1キロ以上も歩かねばならず、またトイレのない家庭では病気の人や高齢者までもが屋外の茂みでの排泄を余儀なくされています。

抗レトロウィルス薬を服用するために必要な安全な水の量は、1日あたり1.5リットルです。しかし、HIVとともに生きる人々が清潔で健康的な生活を送るためには、1日あたり100リットルが必要とされています。それほどの大量の水が、最低限の飲料として、調理用に、洗濯および体を洗うため、あるいはHIVとともに生きる母親のもとに生まれた乳児に栄養製剤を与えるため、栄養状態を改善する目的で作った菜園の水まきや、掃除を行き届かせるため、さらには下痢時の洗濯および体の洗浄のためなどに必要なのです。ところがサハラ以南のアフリカでは、このようなことはまったく行うことができません。

この報告書では、水と衛生設備、衛生教育などをHIV関連サービスに統合させるように勧告しています。そのようなかたちのサービスを通じて、十分な量の安全な水と衛生設備、適切な衛生習慣がない場合、HIVとともに生きる人々の病状が悪化したり、健康で生産的な生活を送るのが困難になりうることを周知できると考えています。

SAfAIDSの事務局長、ロイス・チンガンドゥさんは話しました。 「もし、世界が水と衛生の問題に優先的に取り組まなければ、HIVについて得られたあらゆる進歩は水の泡となってしまいます。すでに存在するHIVと水・衛生との関連に着目し、もっと光をあてるべきだと思います。そのための一層の努力を協力して行わねばなりません」

新しい「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGS)」に関して国連加盟国間の合意まであと1年を切ったいま、ウォーターエイドおよび同じ分野で活動するパートナーは、水・衛生について独立した目標を設けるように求めています。すでにSDGsのドラフトの中で提唱されていますが、あらゆる人が水と衛生設備、衛生教育などのサービスを利用できるようになることが、結局は2030年までにHIV/エイズを撲滅するといった各種の保健分野の目標の達成を支える決定的な役割を果たすと考えるからです。

また、ウォーターエイドでは、水や基本的なトイレ、家庭内での衛生習慣および行動改善といった環境要素を、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに含むように提言しています。それによって、HIVとともに生きる人々は日和見感染を防ぐことができ、より健康で生産的な生活を送れるようになるからです。

報告書(英語)はこちら
「アフリカ南部におけるHIVと水・衛生設備・衛生習慣改善の統合アプローチ:ギャップおよびニーズ評価」

*SAfAIDSとは 1994年に設立された、ジンバブエを拠点とする非営利組織。南アフリカ、ザンビア、スワジランドにカントリーオフィスを置き、アフリカのすべての人々が、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツを実現し、HIV、結核やほかの関連する健康問題の負荷のない生活を送ることを目指して活動しています。