【ニュース】国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)におけるウォーターエイド

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11 November 2024
Image: WaterAid/ Ernest Randriarimalala


2024年11月11日から22日、アゼルバイジャンの首都バクーで第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)が開催されます。気候危機は水の危機です。ウォーターエイドは、COP29において、最も脆弱な人々の声を世界に届けると同時に、COP29に参加する世界のリーダーたちに対して、気候変動にレジリエントな水・衛生 に優先的に取り組むこと、それに資金を拠出することの重要性を訴えます。

2023年11月に開催されたCOP28では、水問題が世界の気候変動議題に浮上しました。しかし、COP28議長のスルターン・アーメド・アル・ジャーベル博士が、水は「適応に不可欠」と認めたにもかかわらず、気候変動の影響に対処するための水・衛生に十分な資金を拠出する、という重要な機会を逃しました。

水と気候変動に関する議論は、2024年6月のボン気候変動会議でも継続され、特に「適応に関するグローバル・ゴール (Global Goal on Adaptation : GGA)」が焦点となりましたが、交渉は進まず、資金の確保も実現しませんでした。一方で、気候危機の原因にほとんど関与していない人々-つまり開発途上国の貧困層・脆弱層が、洪水や干ばつ、サイクロン、熱波、海面上昇などによる壊滅的な被害を受けて困窮しています。

気候変動への適応に必要な資金を提供することは、援助ではなく正義であると言えます。

  • 世界では2030年までに淡水が40%不足する可能性があります
  • 2040年までに4人に1人の子供が、水ストレスの極めて高い地域に住んでいることになると予測されています
  • 低中所得国の水に至急拠出することは、年間 5,000 億ドルの経済効果をもたらす可能性があります

COP29の重要性

自然災害の90%は水に関連しています。地球温暖化が進む中、洪水などの「多すぎる水」や干ばつなどの「少なすぎる水」が人々の生活に直接的な影響を及ぼしています。ますます頻繁に起こる極端な洪水が水源を汚染し、衛生システムの機能不全を引き起こす一方で、長期化する干ばつが湧き水などの清潔な水源を枯渇させています。

水・衛生サービスへのアクセスが十分でないコミュニティでは、コレラのような水系感染症にかかるリスクや、保健医療施設で感染症にかかるリスクが高まります。さらに、家庭内での水くみや家事、家族のケアを担うことが多い女性や女の子は、清潔な水が不足することで特に大きな影響を受けます。

気候変動に強い水・衛生システムやサービスが整備されれば、コミュニティは干ばつや洪水などの異常気象の影響を乗り越え、気候変動の影響に対応することができます。 

Gopal Mondol (50) is one of the Munda Community leaders trying to change the habits of his community through WASH practices.Kaliganj, Satkhira, Bangladesh. December 2022.
Image: WaterAid/ Fabeha Monir

バングラデシュ南西部では、洪水にレジリエントなトイレ、ならびに地下に雨水貯留設備を設置したことで、海面上昇による水源汚染やサイクロン・洪水によるトイレの損壊が起きにくくなり、コミュニティが気候変動の影響に対応することが可能になりました。「コミュニティに設置された設備に雨水を貯められることが、大きな安心になっています。これが私たちの命を守ってくれているのです」とゴパルさんは話します。

Zewdu Adane, chair of Sertekez water committee, Sertekez village, Burie Zuriya, West Gojjam Zone, Amhara Regional State, Ethiopia, February 2022.
Image: WaterAid/ Frehiwot Gebrewold

適切な技術に投資することで、気候変動に強い水・衛生サービスをコミュニティに提供することが可能になります。エチオピア アムハラ州のゼウドゥさんが住む村では、太陽光発電によるポンプで村に水を供給しています。以前は長時間歩いて水くみに行かなければならなかったのですが、今では乾期であっても水が供給され、村の人々は教育や仕事に時間を使うことができるようになりました。

Lydia Byogero, 36, looking inside her rainwater harvesting tank which is under construction, Nakabale Village, Kategere Parish, Namutumba District, Uganda, April 2022.
Image: WaterAid/ James Kiyimba

気候変動に対するレジリエンスを高めるためには、地域社会のニーズに耳を傾けることが不可欠です。リディアさんは、自宅の雨水貯留タンク建設の際に、具体的なアドバイスをしました。彼女は、「雨期には、家族全員が利用するのに十分な水が貯まります。子供たちは井戸まで1時間歩いて水をくむ必要がなくなり、放課後は休息や遊びの時間を持てるようになりました」と話しています。
 

COP29でウォーターエイドが求めるもの

世界のリーダーたちは迅速かつ決定的なアクションをとり、気候変動にレジリエントな水・衛生サービスのためにコミュニティが必要とする資金を拠出しなければなりません。そして、こうしたアクションは、気候変動や水の危機に最も影響を受けている人々のニーズや要望、知識に基づいて進められるべきです。

ウォーターエイドはCOP29において、以下について提言します。

  • 各国政府は、2025年に予定されている次回の「国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions)」の提出に向け、地域の専門家や市民社会、コミュニティと協力し、現地の水・衛生ニーズに基づいた気候適応計画を策定・実施すること。
  • ドナー国政府および多国間金融機関は、気候危機の影響を最も受けている国々に対し、
    タイムリーでアクセスしやすい資金提供を行うこと。それによって低所得国政府が気候変動適応計画をしっかり実施し、コミュニティによる気候変動へのレジリエンスを高める取り組みをサポートすることが可能になります。
  • コミュニティは自ら声を上げ、行動を呼びかけること。気候変動の影響を受けるコミュニティが自らの経験と解決策を共有し、政府に清潔な水と衛生設備を要求すること、ならびに世界中の人々が、気候適応資金の優先的な提供を各国政府に求めることが重要です。

時間はありません。人々が気候変動へのレジリエンスを高め、気候変動の影響に対応するためには、清潔な水と衛生が不可欠です。このことを COP29における議論の中心に据える必要があります。