現在、世界人口の16分の1にあたる4億9,400万人がトイレを利用することができず、屋外での排泄を余儀なくされています。

世界人口の5分の1以上にあたる17億人が、適切なトイレ(「基本的な」または「安全に管理された」衛生設備)を所有していません。多くの場合、排泄物は未処理のまま環境中に残るので、地域の衛生環境を悪化させ、人々の健康を脅かします。

これはかなり危機的状況です。人々が清潔な水と衛生設備を利用できない地域では、感染症が急速に広がります。毎年、5歳以下の子供たち約29万8000人が下痢性疾患により命を落としています。これは、毎日約800人の子供たちが、2分ごとに1人の子供が命を落としているということになります。

女の子や女性にとって、トイレが使えないことは、プライバシーや安全面からみても非常に深刻な課題です。女の子・女性たちは、野外で用を足さねばならず、また、その際、人の目を避けるために夕方暗くなるまで待たなければならず、そのことによって嫌がらせや暴力を受けるリスクが増加します。

学校にトイレがない場合、子供たちは野外で用を足さなければなりません。学校の周りは不衛生になり、子供たちは頻繁に下痢にかかり、授業を欠席せざるをえなくなります。特に女子生徒は、女性用トイレが無いことで安心して学校に通うことができず、さらに月経が始まると中退することもあります。適切なトイレのない学校では、教師を採用することも困難です。

多くの国で、衛生設備の不備や衛生習慣の不在による経済コストは、各国のGDPの5%以上に達しています。
 
多くの政府によるコミットメントにもかかわらず、そして国連で衛生設備のアクセスは人権であると認識されているにもかかわらず、依然として衛生設備の課題は十分に取り組まれていません。現在の進捗ペースでは、持続可能な開発目標(SDGs)の目標「すべての人による安全に管理された衛生設備の利用」は、SDGsの期限より77年遅い2107年まで達成できない見込みです。清潔な水と良好な衛生習慣によって、人々の生活が改善されるためには、すべての人にとって家庭だけではなく学校や保健医療施設などあらゆるの場所において適切なトイレを当たり前にすることが欠かせません。そのため、ウォーターエイドは、衛生設備を広める活動に力を入れています。

ウォーターエイドの取り組み

様々なアプローチを通じて、すべての人々がトイレを利用する世界の実現を目指しています。

WaterAid Timor-Leste WASH Integration and Sanitation Specialist Getrudis Noviana Mau provides hygiene education at at a sato pan stall at a market in Timor-Leste. 2017
Image: WaterAid/ Jerry Galea

このような活動には、様々な組織・アクターとの連携が欠かせません。ウォーターエイドは、より大きな変化を生み出すために、政府や開発パートナー、水道事業体、コミュニティ組織、ビジネスセクターや起業家、現地の人々と連携しながら活動しています。

衛生設備の改善の効果が持続可能であることを目指し、ウォーターエイドは、人々が「トイレを使う」という行動を実践するようになること、つまり行動変容を促すことに注力しています。また、住民とともに、様々なトイレの選択肢を検討、また、その選択肢を提示し、住民たちが、どのトイレが最適であるか、判断するよう促します。

ウォーターエイドは、排泄物が適切に処理される「しくみ」が構築され、それが適切に運用されるよう、排泄物の運搬または保管、処理、廃棄、そして再使用といった、排泄物処理の過程全体に取り組みます。

ウォーターエイドは、すべての人が衛生設備を利用できることを目指し、最貧困層や開発から取り残されがちな人々を優先的に対象として活動します。コミュニティのすべての人々がトイレを利用するようになってはじめて、そのコミュニティの衛生環境は改善され、人々の健康状態は改善されるためです。
 
ウォーターエイドのプロジェクトは、トイレの設置やコミュニティへの啓発を超えた成果も生み出します。ウォーターエイドは、プロジェクトを実施する過程において、各地域で衛生設備の普及の障壁となっていることを見つけ出すようにしています。政府や衛生サービス事業者と連携しながら、その障壁を取り除くことによって、ウォーターエイドはすべての人々があらゆる場所で持続可能な衛生設備を確実に利用できるようになることを目指しています。

ウォーターエイドは、衛生設備の改善が、政治的な優先事項となるよう、グローバルレベル、国レベルで政府に働きかけています。

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