子供たちの 「日常」を変えるために

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Image: WaterAid/ Mani Karmacharya

毎日水くみに行く子供たちの「日常」を変えるために

Samjhana carries home a jerry can in Nepal.
Image: WaterAid/Mani Karmacharya

世界のどこであろうと、子供たちは大きくなったら何になりたいかの夢を持っています。しかし、すべての子供がそれを実現させる機会を持っているわけではありません。

世界では10人に1人が清潔な水を、4人に1人が適切なトイレを利用できません。
こうした環境で暮らす子供たちにとって、

  • 濁った池に歩いて水をくみに行くことが「日常」です。 
  • 不衛生な水を飲んで下痢になり、授業を受けられないことが「日常」です。
  • 学校にプライベートの保たれたトイレがないために、月経が始まると学校を辞めなくてはいけないことも「日常」です。


ネパールでは、230万人以上の人々が清潔な水を利用できません。政府のサービスが行き届きづらい辺境に暮らしていたり、障害や民族、差別が理由で水が得られなかったりする家族がいます。こうした家族の中で水くみを担う子供たちは、水くみに夢を実現する機会を奪われています。

 

水を集めるのは大切な仕事ですが、教師になるという夢も大切です

ネパールのミルチャイヤに住む12歳のサムジャナさん。サムジャナさんが1歳の時に父親が亡くなり、母親が働きに出ているため、祖父母とともに暮らしています。

A portrait of Samjhana Ale Magar, 12, with her bicycle and a jerry can of dirty water, collected fom the source of an unprotected tapped spring in Mirchaiya-9, Siraha, Nepal, February 2017.
Image: WaterAid/ Mani Karmacharya

水をくむのはサムジャナさんの仕事です。家族が使用するのに十分な量を集めるためには1日に3〜4回水をくみに行く必要があり、学校に行けない日もあります。

「5歳か6歳のころから毎日水をくみに行っています。水を集めるには時間がかかるので、遅刻して授業を受けられないことがよくあります。やっと学校にたどり着いたのに授業が終わっていた時には、泣きたい気持ちになります。水を集めるのは大切な仕事ですが、教師になるという夢も大切です。近くに水があれば、時間通り学校に行くことができるのに。」
 

サムジャナさんが暮らす土地、ミルチャイヤ

ミルチャイヤは、インド国境から約32km離れたカトマンズの南東に位置しています。

Landscape view of Mirchaiya-9, Siraha, Nepal, February 2017.
Image: WaterAid/ Mani Karmacharya

ほこりっぽく乾燥しているように見えますが、7~8月のモンスーンの季節にはこの平野はたびたび洪水の被害を受けています。この村には80世帯が暮らしていますが、ほとんどの世帯の男性は首都のカトマンズやインド、中東へ働きに出ています。

飲料水の主な水源は村から約1,6km離れた湧き水です。また、3月に始まる乾期には井戸が干上がってしまうため、約3km先の川まで、徒歩や自転車で水をくみにいかなくてはなりません。

砂で水をろ過できるよう川岸に掘った穴から水をくみますが、それでもまだ濁っており、下痢や腹痛になる人も多くいます。
 

根強く残る差別の問題

この地域では、カーストの問題も深刻です。15歳のニシャさんは、カースト制度のもとに差別されてきた、現在人口の2割程度を占めるダリットと呼ばれる人々の1人です。ネパールではすべて人は法の下では平等とされ、そうした身分制度は撤廃されていますが、差別は根強く残っています。

「上位のカーストの井戸が干上がると、人々は私たちの井戸にやって来ます。「待ちなさい。君たちは階級が低いのだから、今この水に触れてはいけない。」と言われ、順番を譲り、待たなくてはなりません。」

Nisha Mijar, 15, sits on her bed in her room at home in Mirchaiya-9, Siraha, Nepal, February 2017.
Image: WaterAid/ Mani Karmacharya

ニシャさんと妹は、村で広く利用されている井戸ではなく、村の端にあるダリット専用の井戸まで水をくみに行きます。ダリットは不可触民ともよばれ、触れたものが穢れると信じられており、カースト上位の人々と同じ井戸を使うことができないのです。


「私はきちんと勉強して、医者として仕事をしたいです。この村にはお医者さんがいないので、遠くまで行かなくてはならないのです。仕事があれば、家族がお金を必要とするときに手助けすることができます。そのためには学校を休んではいけないと思います。」

世界では、10人に1人は家の近くに清潔な水がなく、4人に1人は適切なトイレを利用できません。現在も各国政府や水道事業体、国際機関、NGOなどが清潔な水を利用できる人口が増えるよう活動していますが、現在のままのペースでは、サムジャナさんやニシャさんのような子供たちが水くみから解放され、清潔な水を利用できるようになるのは2057年―あと40年待たなければなりません。

 

なぜ清潔な水を利用できるようにならないのか

サムジャナさん、ニシャさんたちが、長年待っても清潔な水を利用できるようにならないのには、以下のような理由があります。
 

  • 政府が、清潔な水と衛生的なトイレの重要性、特にそれらが教育や保健、日々の収入にどれくらい影響があるのかを理解しておらず、結果として水・衛生が、政府が取り組むべき優先課題になっていない。
  • 給水サービスやトイレの設置サービスがあったとしても、貧困な世帯が利用できる金額設定になっていない。
  • 物理的に給水サービスが届きづらい場所に住んでいる-例えば、都市部からとても離れた村、都市部のスラム、紛争や自然災害によってインフラが破壊された地域などには、給水設備そのものが設置されづらい状況にある。
  • 障害がある、または、民族が異なる、カーストが異なるなどの理由で、地域のなかで差別を受けたり、取り残されたりしている。

ウォーターエイドは、団体の戦略のなかで「公平性」を主要な目標の1つに掲げています。障害や特定のカーストなどによって取り残されがちな人々、支援を届けることが物理的に難しい遠く離れた村に住む人々にきちんと成果が届くように工夫した水・衛生プロジェクトを実施。そしてその工夫や手法が、他の機関にも採用されるよう働きかけています。


水くみや腹痛で学校を休まずにすむように

ウォーターエイドが別の地域で行ったプロジェクトによって、水くみの重労働から解放されたラクシュミさん。

Laxmi washing hands in the tapstand near her home in Nepal, Feb 2017.

「4年前に給水設備ができて、水くみや腹痛で学校を休むことはなくなりました。将来仕事をするためには、きちんと勉強しなくてはなりません。学校を休まなくてよくなり、本当にうれしいです。」と話してくれました。

皆さまからいただくご支援で、給水設備やトイレの設置、それを住民たちが維持管理していくための体制づくり、設備の修理や管理のための研修、衛生教育などを実施します。これらを通して、この先ずっと、子供たちを水くみの重労働から解放することができます。

子供たちの「日常」を変えていくために、皆さまのあたたかいご支援をよろしくお願いいたします。