【活動レポート・ブログ】パキスタン:洪水から1年、学校が再開し、学びに励む子供たち

Noshad Playing with his toy

壊滅的な被害をもたらしたパキスタンの洪水から1年が過ぎ、子供たちが学校に戻ってきました。しかし、中には学校へ戻れたのが、つい3か月前という子供たちもいて、通常の生活とは程遠い状況です。依然として多くの学校は、基本的な水・衛生やトイレの設備がないまま再開せざるを得ず、そして一部の学校は現在も水・衛生設備を欠いたままの状態です。そしてそのことによって、子供たちは、今なお、学校に通うことが困難になり、貴重な教育時間を失わざるをえないのです。

昨年の洪水被害は、3,300万人の人々の暮らしに影響をもたらしました。その半数は子供*であり、家庭で清潔な水やトイレを使う手段を失い、学校のトイレや手洗い設備も利用できなくなりました。 水・衛生施設がなければ、子供たちの安全が脅かされたり、病欠のリスクや、コレラなどを含む水系感染症にかかったりする可能性が高まります。(*ユニセフからの引用)

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洪水で溜まった水で、3歳の娘の身体を洗わざるを得ない女性

ウォーターエイドが現地のパートナーを通じて聞いたことによれば、一部の子供たち、特に月経中の女の子たちは、トイレに行けないことを恐れて家にいることを選ぶこともあるといいます。また、嫌がらせを受けやすい野外での排せつを余儀なくされたり、トイレに行くために学校を途中で切り上げたりせざるを得ない子供たちもいます。教師たちも、昨年の洪水で学校のトイレ設備が失われた影響を受けており、その多くが茂みを仮設トイレとして使わざるを得なくなっています。

洪水がバディン県を襲ったとき、13歳のノシャットくんと彼の家族は、家を離れて6か月間、道路沿いの避難キャンプに移り住むしかありませんでした。「避難キャンプでの生活は楽しいものではありませんでした。暑かったです。配給袋が届くようになるまで、何日も食料を手に入れることができませんでした」とノシャットくんは振り返ります。「洪水で家から避難しなければならなくなったとき、ぼくも家族も本当につらかったです。すべてが不安で怖かったし、家や荷物がどうなってしまうのか、悲しくて心配でした。お気に入りの通学かばんも失くしてしまったから、余計に動揺 してしまいました」

生活のすべてを根こそぎ奪われたなか、ノシャットくんが本当に苦しんだのは学校にいけないことでした。「学校に行けないのは本当につらかったです」と教えてくれました。「ぼくは勉強が続けられなくて、とても悲しかったし、悔しかったです。洪水でほぼ1年間、学校から遠ざかっていました。たくさんのことを経験し損なったような気がしたし、勉強が遅れてしまうのではないかと心配でした」

ノシャットくんと彼の4人の兄弟の母親であるナジマさんはこう話してくれました。「私たちは持ち物すべてを失い、避難キャンプで何か月も過ごしました。つらい困難に直面していたとき、私は子供たちの将来、特に教育について心配していました」

ダドゥ県に住む10歳の女の子アスマちゃんは、洪水で学校のトイレが使えなくなったことを思い返して、話してくれました。「トイレが使えなくなったので、私や同じクラスの女子生徒は学校に行きたがらなくなりました。それだけでなく、私の家も大きな被害を受けていたし、コミュニティの誰もが悲しみに暮れていました。私の両親は、家の建て直しの手段についていつも心配していて、家族全員、特に子供である私たちにはつらい日々でした。学校は洪水で何か月も閉まったままで、再開したあとも、とても大変でした。飲料水も、十分な食料も、遊具もありませんでした。勉強するための貴重な時間を失い、楽しい学校生活を経験し損なっているように感じました」

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1日に何度も水くみをしなければならなかったアスマちゃん

ウォーターエイドは、被災したシンド州バディン県とダドゥ県、パンジャブ州ラジャンプル県の50校を重要施設として復旧に精力的に取り組んできました。仮設トイレ、給水設備、手洗い設備、ドアや壁などの破損した構造物の修復をすることで、子供たちが安全にトイレに行き、健やかに成長し続けられる学校を取り戻すことができるようにしています。

洪水で甚大な被害を受け、その後施設が復旧したシンド州の学校で校長を務めるアスガー・ルンドさんは、次のように説明してくれました。 「女の子は全員学校に戻り、男の子もトイレに行くために家に帰ることはなくなりました。以前は、教師も近くの茂みでトイレを済ませるか、自宅や街まで出かけていました」

学校に再び通えるようになるまでは長い時間がかかりましたが、ノシャットくんは今新たな希望を見出しています。「学校に戻ることが、ぼくにとってのすべてです」とノシャットくんは言います。 「単に本や授業のことだけではありません。学校は、ぼくが成長し、学び、夢を見ることのできる場所です。学校はぼくにもっとよい未来への希望を与え、自分を信じさせてくれます。先生からの手助けや励ましにすごく感謝しています。学校はぼくの第2の家のようなもので、戻ってこられたことにとても感謝しています」「大人になったら、教師になりたいです。ぼくはいつも先生を尊敬し、生徒たちを助ける姿をすごいと思います。先生たちがぼくにしてくれたように、ぼくも子供たちに刺激を与え、手を差し伸べたいです。教育はとても重要で、教師になることで子供たちの人生を変えたいです」。

Noshad Portrait
未来への希望を持つノシャットくん

ウォーターエイド・パキスタンのカントリー・ディレクターであるアリフ・ジャバル・カーンは、次のように述べます。

「昨年、パキスタンは史上最悪の洪水に見舞われました。この悲劇の影響は長く続き、命を救う水・衛生施設がなければ、何千人もの子供たちが教育を受ける権利を奪われてしまうという状況です。子供たちは、健康か将来かといった二者択一を迫られてはなりません。ウォーターエイドは、最も深刻な影響を受けた地域のいくつかで、重要な施設を修復することができましたが、子供たちに希望を与え、教室に通わせ続けるためには、依然として水・衛生が重要な要素であることに変わりはありません」。