【活動レポート・ブログ】ネパールにおけるウォーターエイドの新型コロナウイルス感染症対応
ネパールでは、52%の人々が、自宅で手洗い設備を利用することができません。 ウォーターエイドは、ネパール政府と緊密に連携しながら、正しい衛生習慣の普及促進と、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に取り組んできました。
ネパールの新型コロナウイルス感染症と水・衛生
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、これまでにネパールで確認された新型コロナウイルス感染症の感染者数は、1月28日時点で270,375人、死亡者数は2,020人と報告されています。
ネパールでは、人々の健康を管理するための仕組みが整っていないことに加え、公衆衛生の緊急事態に対処するスタッフや設備も不十分です。また、出稼ぎ労働者をはじめとする多くの人々が同国を隣国インドの間を行き来しています。
以下の数字から分かるように、ネパールでは、家庭や保健医療施設に水や衛生設備が十分に備わっていません。このような理由から、ネパールは新型コロナウイルス感染症に対して非常に脆弱な国であると言えます。
- ネパールでは350万人が清潔な水を使えません。 (WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme (JMP) 2017)
- 国の給水システムのうち、完全に機能しているのは28%にすぎません。 (Status of Drinking Water and Sanitation 2018/19, Department of Water Supply & Sewerage Management (DWSSM))
- 自宅に手洗い設備がない人は、人口の52%に上ります。(WHO/UNICEF Joint Monitoring Programme (JMP) 2017)
- 保健医療施設の36%には、基本的な給水サービスがありません。 (JMP Baseline Report 20192019)
- 保健医療施設の54%には、診療や治療にあたる場所に手洗い設備がありません。 (JMP Baseline Report 2019)
- 保健医療施設の99%では、基本的な廃棄物管理が行われていません。 (JMP Baseline Report 2019)
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐウォーターエイドの取り組み
新型コロナウイルス感染症の拡大が始まった直後から、ウォーターエイドは、ネパール政府が全国的に取り組む新型コロナウイルス感染症への対応を支援してきました。
衛生習慣の普及促進は、平時より、最も費用対効果の高い公衆衛生対策の1つであり、新型コロナウイルス感染症の予防においても同じことが言えます。特に手洗いは、新型コロナウイルスなどの感染拡大を抑えるために私たちができる第一の防御策です。 ウォーターエイドは、正しい手洗いの仕方を紹介する映像やポスター等を制作。10月15日の世界手洗いの日には、ウォーターエイドスタッフが正しい手洗い方法を実践する動画を制作・公開しました。
●非接触式手洗い設備
新型コロナウイルス感染症が広がる中で導入されたウォーターエイドの設備の中で、最も革新的なものの1つは、蛇口に触れることなく手を洗うことを可能にする非接触式の手洗い設備です。足でペダルを踏むと水が流れるしくみで、これにより新型コロナウイルスをはじめとする感染症のリスクを最小限に抑えることにつながります。
ウォーターエイドはこれまで、この手洗い設備を多くの国に設置してきましたが、ネパールでは、感染拡大初期である2020年4月より導入を開始。マニュアルなども制作し、ウォーターエイド内のみならず、他団体・組織が活用できるようにしました。
●啓発用の素材
ポスターとチラシ
ウォーターエイドは、保健教育情報通信センターと協力し、新型コロナウイルス感染症の症状や予防方法について関心を高めるポスターやチラシを作成しました。現地語であるタルー語とマイティリ語に翻訳したものは、現地パートナーの協力のもと、シラハ郡とバルディヤ郡で配布しました。
ウイルス感染予防策を紹介するビデオメッセージ
ウォーターエイドは、デジタルプラットフォームVision360と提携して制作した、新型コロナウイルス感染症の予防に関するビデオメッセージを、全国に広く放送しました。ビデオメッセージにはミス・ネパール2005とミス・ネパール2015が登場し、感染予防策について説明しました。
ラジオCM
保健教育情報通信センターが現地の声優と連携し、現地語であるタルー語とマイティリ語で新型コロナウイルス感染症予防に関するメッセージを届けるラジオCMを制作しました。
●定期予防接種プログラムと連携した衛生習慣の促進
ウォーターエイドは、ネパールにおいて、新型コロナウイルス感染症前から、手洗い等の衛生習慣の普及に注力してきました。そのなかの1つが、ネパール政府保健人口省と連携した、新生児・乳児向け定期予防接種プログラムに衛生習慣の普及活動を組み込んだプロジェクトです。
新型コロナウイルス感染症の拡大をうけて、ウォーターエイドは、この取り組みを強化してきました。これまで伝えてきた手洗いや食品衛生といった衛生習慣に加えて、咳エチケットや人と距離を保つこと、外出から戻ったあとに手洗いすることなど、新型コロナウイルス感染症予防に関するメッセージを取り入れた啓発素材を制作。定期予防接種プログラムに参加する子供の保護者たちに、衛生セッションを通じて伝えると同時に、啓発素材を配布しています。
こちらの動画で、その取り組みの一部をご紹介しています。この取り組みによって、村の女性たちは、人を距離を保つことや外出後の手洗い等、感染予防のための行動を実践しています。
●衛生習慣を変えるための連合
ユニリーバとイギリス国際開発省が「衛生習慣を変えるための連合(Hygiene Behaviour Change Coalition)」を設立。1億ポンド(約142億円)の資金のもと、各国で、新型コロナウイルス感染症対策のプロジェクトが実施されています。ネパールでは、ネパール政府とウォーターエイドが連携し、この資金を得て、プロジェクトを実施しています。