【活動レポート・ブログ】モザンビーク:人々の健康を守る病院や診療所に “命の水”を届ける水・衛生プロジェクト進行中

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Image: WaterAid/ Ricardo Franco

世界の最貧国のひとつであるモザンビーク北部のニアサ州では、60%の人々が貧困ライン以下で暮らしており、清潔な水を利用できるのは人口の38%、適切なトイレを利用できるのは27%にすぎません。クアンバ郡では、この数字はさらに悪化し、適切なトイレを利用できるのは人口の24%、4割の人々が野外排泄をしています。

この郡の最大の問題のひとつは、保健医療施設に清潔な水がないこと、そしてトイレもないことです。クアンバ郡にある保健医療施設のうち、施設内で清潔な水が得られるのは、21%にすぎません。保健医療施設に清潔な水やトイレ、手洗い設備がなければ、施設や医療器具を清潔に保つことができず、適切な医療サービスを提供することができません。また、医療従事者は、治療中に手洗いすることもできません。不衛生な環境での出産に伴う感染症によって、年間100万人を超えるお母さんと赤ちゃんが命を落としており、このことは出産時に赤ちゃんが亡くなる原因の26%、女性が亡くなる原因の11% を占めています。汚れた水しか手に入らないなかでの出産は、母子ともに大きなリスクを伴います。また、医療従事者の70%は女性と言われていますが、トイレがない、手洗いができない職場では、月経期間中なども安心して働くことができません。新型コロナウイルス感染症が拡大していた時期には、こうした保健医療施設で働く医療従事者たちから、「この病院が感染源になるのではないか」「自分だけではなく家族を感染の危機にさらすのではないか」という不安の声が多くあがっていました。

こうした状況を受けて、ウォーターエイドは、2022年の冬、人々の健康と命を守る病院や診療所に清潔な水を届けるために、冬募金へのご協力をお願いしました。皆さまのご支援を受けて、モザンビークの保健医療施設の水・衛生の状況を改善するプロジェクトが進んでいます。

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保健医療施設に給水設備がないため、家族が出産時に使用したシーツ等を外で洗う女性
Image: WaterAid/ Chileshe Chanda

このプロジェクトは、保健医療施設の水・衛生の状況を改善することを目的に、2022年6月にスタート。3年間で、ニアサ州クアンバ郡のなかで最も水・衛生が行き届いていない保健医療施設5箇所を対象に、人々が安心して医療サービスを受け、健康な生活を送ることができるよう、給水システムとトイレを設置し、地域に衛生習慣を普及することを目指しています。また、この取り組みを「モデル」として、保健医療施設の水・衛生状況の改善に注力するよう現地政府に働きかけることも目的としています。

2023年2月と3月には、サイクロン「フレディ」がモザンビークに上陸。給水・衛生設備が破壊されたり、衛生状況が悪化したりしたことで、その前から感染拡大が見られたコレラが、さらに急増する事態となりました。加えて、物価の高騰にも直面し、本プロジェクトは開始直後から様々な困難に見舞われましたが、これまで下記のとおり進捗しています。

①保健医療施設5か所における水・衛生の状況改善
保健医療施設5か所の給水システムの建設・修理、トイレと手洗い設備の設置は50%完了しました。また、新しい給水システムの維持管理を担う現地の民間事業者3社を選定し、その3社のスタッフならびに現地の地方自治体の担当者を担当に、給水システムの管理に関するトレーニングを実施しました。さらに、住民を対象に、手洗い等の衛生習慣を普及・啓発するキャンペーンで使用する広報素材の制作に着手しました。

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Image: WaterAid/ Ricardo Franco

② 現地政府の能力強化
各保健医療施設の給水システムの継続的な管理モデルについて話し合うためのワークショップを2回開催し、現地政府の担当者が参加しました。

③誰もが使いやすいインクルーシブな水・衛生設備の設置
手押しポンプやスロープのない手洗い場、狭いトイレなどは、障害のある人々の利用を妨げます。ウォーターエイドは、障害のある人々が、本プロジェクトの計画策定に参画し、障害のある人々の意見やニーズが、本プロジェクトで設置する給水・衛生設備の設計に取り入れられるよう、現地団体「ADEMO(the Association of Disabled People in Mozambique)」との連携を開始しました。

④水・衛生を通じた女性のエンパワーメント
保健医療施設で清潔な水を使えない、トイレを使えないということは、特に出産などで保健医療施設を利用する女性たちの健康と命に大きな影響があります。そのため、本来であれば、こうした水・衛生プロジェクトの計画段階から、女性がしっかり参加し、意見やニーズを表明することが大切です。一方、特に農村部では、地域の意思決定の機会に女性が参加することができない、ということが多くあります。そこで、ウォーターエイドは、実際にこの地域の女性たちが直面している課題を正確に把握し、それをプロジェクト計画に反映させるために、女性の地位向上に取り組む現地団体FOFeN(the Forum of Feminist Organisations)と連携して、女性のニーズを把握する調査を実施しました。

 

地域の住民たちもこのプロジェクトの成果をとても楽しみにしています。

クアンバ郡に妻と3人の子供と住み、民間事業会社で働くエリゼウ・ムラレイアさんは、以前、手押しポンプ付きの掘削井戸を含む小規模な給水プロジェクトに携わったことがあるため、このプロジェクトが給水システムの維持管理を担当する民間事業会社を探していると聞いたとき、すぐに自分のスキルと経験を活かして、この新しい職務に就くことを決めました。
「ウォーターエイドが民間事業者を募集していると聞いて応募しました。新しい給水システムによって、安全な水を飲むことが可能になります。これによって、病気が減り、コミュニティは助かります。私の会社は多くのことに貢献できると信じています」

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Image: WaterAid/ Ricardo Franco

クアンバ郡に住む女性エスメラルダ・アルベルトさんは、話します。
「ここエタタラでは、病院がかなり改善されてきています。以前は(この病院に)トイレも水もありませんでした。今は水があるから、出産の後、入浴して、きれいになって家に帰れることができます。状況は本当に良くなっています!私たちは、このプロジェクトにとても感謝しています。」

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WaterAid/ Ricardo Franco

エタタラ・コミュニティに住む女性、ビビアナ・ジュリアオさんは話します。 
「建設作業によって、保健医療施設の改善が進んでいることを見て、とても嬉しく思います。出産後のお母さんたちが体を洗い、衛生に気を配る場所があるのです。そのことで私はとても幸せになります」

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Image: WaterAid/ Ricardo Franco