【活動レポート・ブログ】カンボジア:衛生作業員が安全で尊厳のある環境で働けるように

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衛生作業員は、排せつ物をトイレから取り出して安全に処分する、重要な役割を担っています。下水管を掃除したり、トイレのピットや腐敗槽のくみ取りをおこなって汚泥を運んだりするのも衛生作業員の仕事です。国によっては「マニュアルスカベンジャー」と呼ばれ、原始的な道具や素手で排せつ物のくみ取りをしている人たちもいます。

ウォーターエイドが活動する国の1つであるカンボジアでは、衛生作業員たちが仕事を安全に行うために必要な道具や個人防護服(PPE)、知識、そして住民による認識や感謝が欠けており、多くの衛生作業員が過酷な環境の中で働いています。ウォーターエイドは、この状況を変えるため、彼らの身の安全を確保するとともに、衛生作業員たちが自らの経験を語り、住民たちから敬意が払われることを目指す活動を行っています。

カンボジア西部に位置するバッタンバン州では、衛生作業員と公共事業運輸局(DPWT) が、すべての人に公共下水サービスを提供し、安全な衛生環境を維持するために重要な役割を担っています。しかし、衛生作業員たちは、衛生状態が悪い、狭くて危険な空間で働いているにも関わらず、危険物質やそのほかの衛生上のリスクから身を守る方法について、十分な知識を持っていないことがほとんどです。これまでも衛生作業員たちに向けた支援は行われてきましたが、仕事の性質上、彼らの健康が害される危険性があることには変わりありません。

劣悪で危険な環境での労働に加え、一部の市民が衛生作業員の仕事に対して嫌悪感を持っているため、衛生作業員たちは疎外され、差別を受けてきました。衛生作業員たちは、住民や自治体から認識されたり感謝されたりすることもなく、また、必要な協力を得ることもできず、下水道に捨てられた家庭ごみと闘わなければならなかったり、人々の家で作業を終えたあとに自分自身を洗うための水の提供を拒否されたりすることもあります。

バッタンバン州で衛生作業員として働く22歳のチェーさんは、次のように話します。

「私は、人々に家庭ごみをきちんと管理することを学んでもらいたいし、私たちのことを差別しないでほしいです。私たちが掃除をしなければならないようなものを生み出しているのは彼らなのに、なぜ私たちが差別を受けなければならないのでしょう。作業後に手を洗うための水さえもらえないこともあるのです」

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衛生作業員のチェーさん(22歳)
Image: WaterAid/ Dy Savong

 

衛生作業員の権利を守る革新的なアプローチ

ウォーターエイドは、衛生作業員が、家庭での生活や仕事中に安全で適切な水とトイレ、手洗い設備を利用する権利と、安全に働く権利を守る活動をしています。衛生作業員たちは、自治体や市民から認識され、感謝され、支援されるべき存在です。それらが、衛生作業員たちの安全で尊厳のある労働環境を実現することにつながるのです。

ウォーターエイドは、衛生作業員たちの権利を守るため、「Who Gives A Crap(環境に配慮したトイレットペーパー製造・販売し、利益の一部をウォーターエイドの活動にご寄付いただいているオーストラリアの企業パートナー)」の支援を受けて、バッタンバン州で革新的なアート・プロジェクトを実施しました。カンボジアの写真家であるレミッサ・マックやアートグループである「Phare Ponleu Selpark Organization(カンボジアの非営利団体。団体名は、クメール語で「芸術の輝き」を意味する)」と協力し、衛生作業員たちに芸術に関するスキルを提供しました。衛生作業員たちは、このプロジェクト期間中、普段の仕事をしながらも、写真や映像の撮影、絵画を使って自身の経験や想いを発信する方法を学びました。

衛生作業員たちによる作品は、Phare Ponleu Selpark芸術学校の作品展で展示されました。自治体職員や学生、NGO、一般市民を含む多くの来場者が作品を鑑賞したほか、衛生作業員への理解を促すための質疑応答も行われました。

新しいスキルと、安全性の向上、他組織との連携強化

このプロジェクトを通じて、衛生作業員たちは芸術に関する新しいスキル身につけ、さまざまな媒体を使って自らの想いや経験を発信する機会を得ました。衛生作業員たちのストーリーは、彼らが直面している課題に対する人々の意識を高め、排せつ物の処理や衛生環境の改善に対して、市民や自治体との協力関係を強めることにつながりました。また、この経験によって、衛生作業員たちは、自信をもって、衛生問題をめぐる懸念を広く訴えることが可能になりました。