【プレスリリース】ワクチン+水・衛生+栄養改善で多くの命が救われる
開発途上国での予防接種の普及に取り組む国際的な官民パートナーシップ「Gaviワクチンアライアンス」の資金確保のため、イギリス政府が主催する「世界ワクチンサミット」が6月4日に開かれます。ウォーターエイドは、ネパールでの予防接種と衛生習慣の普及を組み合わせた取り組みなどで成果を上げており、サミットに合わせて、予防接種の普及とともに衛生の改善を進める重要性を訴えます。
毎年何千人もの子供たちが、コレラや腸チフスなどの病気で命を落としています。これらは、ワクチンや清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣によって防ぐことができる病気です。その一方、定期的な予防接種と水・衛生、栄養改善を組み合わせることで、年間70万人近くの子供たちの命が救われ、何十億もの5歳未満の子供の下痢や肺炎を防ぐことができるとの研究結果もあります。
新型コロナウイルスの感染が広がる中、世界は新型コロナウイルスに対するワクチンを待っています。しかしながら、ワクチンが開発され、実用化されるまでは、保健医療システムを崩壊させることなく維持・強化するためにも、感染拡大の防止が何より重要です。
ネパール:予防接種時の衛生教育で大きな成果
2015年、ネパールで、子供が命を落とす主な要因の一つは下痢でした。その年に病気で亡くなった5歳未満の子供は1,200人以上。この半数以上が不衛生な水や、適切なトイレの不足、劣悪な衛生状態に関連していました。
ネパールでは、出産後、生後9カ月までの間に、新生児・乳児は少なくとも5回、医療機関で予防接種を受けていました。ウォーターエイドはこのシステムに着目。保健省と協力して、予防接種の際に、保護者に正しい衛生習慣を伝えるプログラムを組み込みました。女性コミュニティボランティアがウォーターエイドが開発したゲームやうちわなどの教材を使って、手洗いや母乳育児、調理・食事に関する衛生習慣の理解を促し、その定着を図りました。
プログラムには17万人の母親が参加。その成果は大きなものでした。主要な5つの衛生習慣についてみると、プログラム前に実践していた家庭は2%にすぎなかったのが、プログラム終了後、1年の時点で、53%の家庭が継続して実践していました。また、それまで予防接種を受けに来なかった層へ接種を促す効果もあり、接種率も向上、下痢の発生率は20%から5%に大幅に低下、さらに学校の中退率も減少しました。
水・衛生の改善が将来の保健医療を支える
こうした実績も踏まえて、ウォーターエイド・イギリスのCEO、ティム・ウェインライトは「予防接種と水・衛生の改善は、保健分野において、最も効果的で、費用対効果も高い支援の一つ。しかし、(予防接種に比べて)衛生の改善への予算は非常に少ない」と指摘します。そして、衛生改善の取り組みを強化することによって、さらに大きな効果を上げることができるとの立場を取ります。
ウェインライトは「ワクチン開発への資金の拠出は非常に重要です。しかし、衛生改善に対して同様な支援があれば、予防接種と水・衛生の改善を統合したプログラムが一般的なものとなり、各国は将来の保健医療の危機に対して、さらに強さを持つことができるようになるでしょう」と話しています。