カンボジアの保健医療施設ですべての人が利用可能な水・衛生サービスを促進

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27 December 2018
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12月3日は国際障害者デーです。この日に合わせて、ウォーターエイド・カンボジアの水・衛生と保健のプログラムマネジャーであるチャンナ・サム・オルが新たなの作成に向けた取り組みを話します。

カンボジアにおいて、1,600万人の保健に関するニーズを満たすために、統合的かつ質の高い健康増進、予防的かつ基礎的な治療と出産を行える保健医療施設が1,100か所あります。各保健医療施設は約8,000人から10,000人の人を診療しており、紹介・搬送先として、およそ100か所の病院および9つの国立病院が二次・三次といった専門的な医療を提供し、保健医療施設から紹介された患者の治療にあたる中心的役割を担っています。「ひと中心のケア」を実現するために、カンボジアの保健省は医療サービスの提供、アクセス、公平性の質を改善するため、真剣に取り組んでいます。

状況は改善しています・・・

私が保健分野において仕事をする中で、状況が改善しているのがわかります。例えば、今ではより多くの女性が自宅よりも保健医療施設で出産をするようになり、低所得世帯や障害を持つ人々も政府からの補助によって保健サービスを利用できています。

しかし、より一層の取り組みが必要なのも事実です。だからこそ、ウォーターエイド・カンボジアは「ユーザーフレンドリー(利用しやすい)」サービスという概念、そしてカンボジアが、保健医療施設における水・衛生設備を使いやすいもの、また、すべての人が利用可能なものにすることによって、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)※1」に向けて前進するにあたり、私たちがどのように支え、貢献できるのかについて焦点をあててきました。
※1ユニバーサル・ヘルス・カバレッジとは、すべての人が適切な保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態

・・・しかし、さらなる取り組みが必要です。

私の15年におよぶカンボジアにおけるNGO活動の中で、女性と子供の健康は常に私の仕事の中心にありました。農村部の保健医療施設を訪れる際、私は常に「現地の保健サービスが人々のニーズに応えているのか」を問い続けています。2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現するという持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、水・衛生設備が利用できる、感染予防と管理が適切に行われている、といった保健医療施設における基礎部分を改善する必要があります。これらの重要な基礎部分がなければ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現は不可能でしょう。

なぜ保健医療施設では利用者に優しい水・衛生設備が必要なのでしょうか

私は、特にある農村部の保健医療施設を視察した時のことを鮮明に覚えています。視察中、その施設が利用しやすい施設なのかを分析するツールを用いて施設内を観察・分析していました。また、その施設で出産を終えたばかりの女性に話を聞くことができ、出産後、施設でどのような体験をしたか教えてもらうことができました。彼女は、施設内における水・衛生設備の利用についてはわずかしか語らず、詳しく話すのも少し躊躇しているように見えました。彼女と話し終えた後、私は出産後に過ごす部屋の近くにあるトイレ、手洗い場、および入浴設備を見て回りました。トイレは10メートルほど離れたところにあったのですが、便座に座るのではなく、しゃがみこんで用を足す形式の小さなトイレしかなく、手すりも設置されていませんでした。また、高いところに洗面器が置かれていましたが、中にはわずかな水しか入っておらず、そこからトイレを流すための水を手にするのは困難なように思えました。私たちが視察を行っている間も、先ほど話をした女性はそのトイレに行きましたが、すぐに再び部屋に戻っていったのです。彼女は自分一人では水をとることができず、トイレを流せないため、自分の母親に手伝ってもらう必要がありました。

また、他の例として、私たちのプロジェクト協力団体であるレインウォーター・カンボジア(Rainwater Cambodia)から聞いた話にも胸を痛めました。レインウォーター・カンボジアはカンボジア東部トボンクムン州において、世界保健機関(WHO)とユニセフが共同で開発した、「保健医療施設における水・衛生改善の手引き」を活用しながら、6か所の保健医療施設で水・衛生プロジェクトを実施しています。この手引きによって、保健医療施設は、その施設の状況について自ら分析し、リスクを見つけ出し、計画の策定やモニタリングを改善することができます。レインウォーター・カンボジアが、プロジェクトを実施する保健医療施設の1つであるブロハ・クレン(Broher Khleng)に調査に赴いた際、診察を待っていたチャムさんという男性と会い、話を聞きました。車いすを使う彼は、自宅からその保健医療施設まではちょうど20分で到着するそうです。彼は診察を待っているときに、トイレを使いたくなったそうですが、施設内には利用可能なトイレが設置されておらず、チャムさんは往復1時間かけて、一度自宅に戻り、用を足し、再度保健医療施設に来なければなりませんでした。

この二つの例は、妊娠中の女性や高齢者、障害を持つ人々が保健医療施設で水・衛生設備を利用する際に、他の人々と比較してより困難な状況に直面していることを示しています。

私たちの答え:保健施設における利用しやすい水・衛生への参加手引き

カンボジアの国立公衆衛生機関(National Institute of Public Health)が行った、5州における公的な保健医療施設に関する研究によると、水の供給状況は良好である一方、衛生設備やサービスはさらなる改善が必要です。また、多くの設備がアクセスしにくいため、動きに制限のある人々や月経中の女性のニーズには応えきれていません。

その結果、私たちのチームはアクセスしやすさに焦点を当てることにし、どのように戦略的に対応していくかを議論しました。オーストラリア・メルボルン大学のノサル・グローバルヘルス研究所(Nossal Institute for Global Health)が実施したグローバル予備調査を活用し、保健医療施設利用者の中でも移動に制限がある人々を完全に特定するための手法、また、そのような人々が、自身が持つニーズについて声をあげるためのしくみ・機会が存在しないことがわかりました。このような背景から、ウォーターエイド・カンボジアは各関係者と共に、「保健医療施設における利用しやすい水・衛生設備の確認用手引き」を草案し、水・衛生、保健、および障害者の課題に取り組む各分野の専門家に共有しました。最終的には、カンボジア中部コンポントム州で、他のNGO関係者、政府の代表者、および州の保健局の担当者とともに、協議会を開催し、上記の手引きを試験的に使用してみるに至ったのです。

協議の結果、保健医療施設がこの手引きを利用するには、より適切かつ技術的な計画設計が必要だという提案がありました。ウォーターエイド・カンボジアは障害者支援に取り組むNGO「ヒューマニティ・アンド・インクルージョン(Humanity and Inclusion)」と協働で見直しを行い、技術的な設計計画を文書にしました。ここに至るまでのすべての情報、協議、試験的実施により、私たちの取り組みはより洗練されたものになり、最終的には「保健医療施設における利用しやすい水・衛生への参加手引き」を作成することができました。

次の取り組みは何でしょうか?

今後はこの手引きを試験的に実施し、保健医療施設における利用しやすい水・衛生設備の技術設計を提案する予定です。この試験的実施から学び得るものにより、患者とコミュニティの経験を政策決定者に伝え、2030年までにユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けて誰も置き去りにしないことを約束し、さらに利用しやすい保健医療施設を提唱できるようになります。

 

ウォーターエイド・カンボジア
水・衛生、保健プログラムマネジャー チャンナ・サム・オル