3/22世界水の日に向けて報告書「隠れた水-Beneath the surface」を発表
水・衛生専門の国際NGOウォーターエイドは3月20日、報告書「隠れた水― Beneath the Surface」を発表し、高所得国が水リスクに苦しむ国々から「ウォーターフットプリント(=食料や製品の生産から消費までの過程で使用される水の総量)」の大きな製品を輸入していることに対して警鐘を鳴らし、製品の生産をより持続可能にすることを呼びかけ、また消費者に対しても自らの消費習慣を再考するよう訴えかけています。
ウォーターフットプリントの大きい製品、つまり生産に多くの水を必要とする製品には次のようなものが挙げられます:
- コーヒー1杯は200ml程度ですが、その1杯のコーヒーを淹れるために必要なコーヒー豆を生産し消費されるまでには140リットルの水が使われています。対して、お茶1杯あたりのウォーターフットプリントは34リットルと比較的小規模です。
- 1キログラムのアボカドを生産するためには、およそ2,000リットルの水が必要となります。
- 全世界の灌漑用水の4割、全世界の地下水減少の17%を占める米は、1キログラム生産するために2,500リットルの水を要します。
- 綿花は生産に大量の水を要する繊維原料であり、インドで栽培・生産されている綿花は1キログラムあたり22,500リットル、パキスタンでは、平均9,800リットル、米国では約8,100リットルの水を使用しています。
世界では40億人近い人々が水の乏しい地域で生活をしており、このような地域ではすでに年間の水需要が供給できる水の量を上回っています。また、この数字は2050年までに50億人に達すると予想されています。食料や作物の輸出は、多くの国にとって重要な収入源であるものの、生産や栽培が持続可能でない場合、その地域の水不足はさらに深刻なものとなります。
ウォーターエイドのシニアポリシーアナリスト、ヴァージニア・ニュートン=ルイスは次のように述べています:
「私たちは自分自身の消費行動が必ずしも持続可能ではないことを認識し、それを変えることによって世界中の水不足に悩むコミュニティに与える影響を軽減させていく必要があります。消費者、ビジネスセクター、そして意思決定機関は自らの行動が世界の他の地域に及ぼす影響についてより一層意識することが重要です。」
日本はアメリカに次ぐ世界第2位のバーチャル・ウォーター(仮想水=食料等を輸入する消費国がそれらを自国内で生産したと仮定する場合に必要な水の量を推定したもの)輸入国:
豊富な水に恵まれた国々と、水の供給が不足している国々との間で資源のバランスをとることができるとしたらそれは理想的な姿です。しかし、現実には世界のバーチャル・ウォーターの半分(49%)は水ストレスに苦しむアメリカ、パキスタン、インド、オーストラリア、ウズベキスタン、中国、トルコから輸出されています。反対に、日本をはじめ、メキシコ、スペイン、イギリス、中東の国々は他国からバーチャル・ウォーターを「輸入」し、自国内での水の使用量を「節約」していると言えます。
水の輸出量が多い国々が受ける深刻な影響:
- エチオピアではバラ等を含む輸出用作物のための大量灌漑と気候変動の影響で、アビジャタ湖が縮小しています。
- インドにおける地下水枯渇率は2000年から2010年の間に23%増加 。インドは、世界第3位の「地下水輸出国」であり、その「地下水輸出量」は世界全体の12%を占めています 。その一方、国内では10億人が水の枯渇した地域で生活をしています。
2015年、国際社会は「2030年までにすべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」という国連の持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6を達成することを約束しました。「安心して使える水が手に入ること」は基本的な人権であり、最優先されなければなりません。
ウォーターエイドCEOのティム・ウェインライトは次のように述べています:
「2019年の世界水の日、ウォーターエイドは2030年までにすべての場所ですべての人が清潔な水と適切なトイレを利用できる世界の実現に向けて決意を新たにし、水の安全保障に関して国際社会が協力し取り組むことを呼びかけます。食料や衣料品の輸出による経済発展を推進することが、現在および次世代の水利用を妨げないようにするためには早急な取り組みが不可欠です。」