【活動レポート・ブログ】パキスタン:洪水の被災地で 給水設備・トイレの修復、衛生セッションなど継続中 

Nazia 12 and Shabana, 14, is collecting water from a WaterAid supported water tanker, Fazilpur, Rajanpur, Pakistan.  WaterAid emergency flood response, Pakistan, September 2022.
Image: (no credit)

ウォーターエイドの活動国のひとつであるパキスタンでは、6月中旬から続いた豪雨によって各地で洪水が発生し、多くの市民が命を落とし、甚大な被害に見舞われています。豪雨と洪水により、パキスタンの84県で3,300万人が被災。400万人の子供たちが保健サービスを受けられない状況にあるほか、550万人の人々が安全な飲料水を手に入れることが困難になっています。 

さらに、パキスタンの国家災害管理庁(NDMA)は、豪雨と洪水により、641人の子供を含む1,719人が死亡し、4,006人の子供を含む12,867人以上が負傷したと報告しています。死傷者数の3分の1を子供が占めるなど、子供たちが受けた被害が目立っているほか、死亡者数の約半数、負傷者数の約66%がシンド州で記録されています。 

洪水によって甚大な被害を受けた地域では、給水・衛生設備の約半数が、壊れたり故障したりしており、コミュニティは感染症など病気のリスクにさらされています。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、パンジャブ州とシンド州では最大50%の給水・衛生設備が深刻な被害を受け、南西部に位置するバルチスタン州では30%、ハイバル・パフトゥンハー州では、20%の給水システムが被災しました。 

スワート渓谷の北にあたるマディヤンでは、給水管、道路、橋などが破壊されました。家屋も一部損壊、あるいは全壊し、10日以上停電が続きました。人々は清潔な水を得るために2km以上歩かなければならず、衣類や食器は不衛生な水で洗わざるをえないと報告されています。 

パキスタン、ハイバル・パフトゥンハー州スワート県
パキスタン、ハイバル・パフトゥンハー州スワート県
Image: WaterAid/ Yasir Bajwa

トイレが洪水で壊れたり、あふれたりしたため、また、給水設備が故障して清潔な水が得られなくなったり、水質が悪化したりした結果、人々はコレラなど命にかかわる病気に感染するリスクに直面しており、気候危機の影響が深刻であることを明らかになっています。 

被害が深刻なシンド州を訪れたウォーターエイド・パキスタンの現地代表アリフ・ジャバー・カーンは、次のように述べました。 

「多くの被災した地域から、病気の発生が報告されています。家に戻れず、清潔な水や衛生設備のない状況では、病気に対する心配が残るでしょう。家に戻っても、壊れたインフラや汚染された水源に直面することになります。家庭、学校、保健医療施設における給水設備の復旧と除染を優先しなければなりません。」 

ウォーターエイドは、このような状況を受けて、被災した人々が、清潔な飲料水を得て、安全にトイレを利用することができるよう、8月末より緊急支援を開始。給水車による飲料水の配布や壊れたり故障したりした給水設備・トイレの修復を通じて、人々が清潔な水とトイレを利用できるようにしたほか、こうした被災地では衛生環境の悪化によって、下痢等の病気が流行しやすくなることから、手洗い等衛生行動について啓発する衛生セッションを数多く実施しました。ウォーターエイドは最も被害の大きいシンド州バディン県、ダドゥ県、ジャムショロ県、ハイバル・パフトゥンハー州スワート県、パンジャブ州ラジャンプル県の5県での活動に注力しており、こうした活動状況は、パキスタンの国家洪水対策調整室に定期的に報告しています。 

下記は、9月末までに、ウォーターエイドが実施した活動の一部です。 

  • 被災した1,100世帯を対象に、給水車で飲料水を提供しました。 
  • 避難所などを対象に、135 基の仮設トイレを設置しました。 
  • 衛生・月経衛生キット4,790セットを配布しました。 
  • コミュニティで衛生セッションを397回実施。そのうち108回を女性を対象に、43回を学校の子供たち対象に実施しました。 
  • 女性と女の子のニーズに対応するために月経衛生セッションも実施。女性1982人と女の子1215人が参加しました。 
  • 4か所の給水システムの修復を進めています。 
  • 22 か所で、溜まった水の排水を完了しました。  
  • 学校2校のトイレ10基の修復を進めています。  
  • 障害者用車いす621 台を調達しました。今後、詳細なニーズ調査のうえ配布する予定です。 
衛生キットを受け取る女性たち 
衛生キットを受け取る女性たち 
Image: WaterAid

このように豪雨・洪水が発生し、給水設備・トイレなど、人々の健康を支えるインフラが壊されたり故障したりして使えなくなると、その地域の衛生環境は悪化し、人々は災害による被害だけでなく、下痢等の感染症のリスクにもさらされることになります。清潔な水とトイレがあり、正しい衛生習慣が普及していれば、そしてそれらが災害時にも機能すれば、人々は生活を再建することが可能になります。 

飲料水を得る子どもたち
飲料水を得る子どもたち
Image: WaterAid

ウォーターエイドは引き続き、パキスタンにおいて、被災した人々の健康と命を守るために、水・衛生分野で活動を続けていきます。また、今後、気候変動の影響による災害がますます増えていくことが予測されるなか、コミュニティが、気候変動に、そして感染症などの健康危機にレジリエントであるためには、清潔な水とトイレ、衛生習慣へのさらなる取り組みが不可欠であることを国際社会に働きかけていきます。