【活動レポート・ブログ】インド:7年後には人口の4割が安全な飲料水を得られなくなる
インドはその急速な成長のかげで、人々の生命を脅かすほどの水危機に直面しています。現在、6億人が水不足の状況にあり、2030年までに人口の40%が、安全な飲料水を入手することができなくなると予測されています。この水危機の原因は、地下水枯渇、脆弱な水・衛生インフラ、水質汚染や気候変動の影響など、複数の水問題が各地で起きていることにあります。
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地下水不足
気候変動の影響で乾期が長引いたり、雨の降り方が変わったりしていること、また、これまで大量の地下水を使ってきたこと(インドの地下水消費量は世界1位)によって、国内の52%の井戸で地下水量が低下していると言われています。インドでは、人口の80%が地下水を飲み水として利用しているため、地下水不足は、人々の命に直結する問題です。
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脆弱な給水インフラ
インドでは、水道や井戸があったとしても、安全な水を得られない地域が多くあります。水道があったとしても、水道管の損傷により、あちこちで水漏れが起きていたり、損傷箇所から、水道水が大腸菌に汚染されたりしています。インドの上水道の70%が汚染されているとも言われています。こうした水道管の損傷やインフラを動かす電力の不足、水源となる地下水の枯渇などが原因で、1日数時間しか水道が使えないこともあります。
水道がない地域では、手押しポンプ式井戸がよく使われています。しかし、地下水不足により水が出ない、壊れて修理されずに放置されたまま、といった理由により、村にある手押しポンプ式井戸を使うことができなければ、遠くまで水くみに行くしかありません。
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水質汚染
インドでは、人口の80%が、飲料水として地下水を利用している一方、同国の3分の1の地域では、地下水に含まれるフッ化物、鉄、塩分、ヒ素が基準値を超えており、飲料に適さない状態 と言われています。地下水の減少により、沿岸部では海水が地下に侵入してきており、地下水の塩水化が進んでいます。フッ化物で汚染された水を知らずに飲み続けた結果、フッ素症を発症し、歩けなくなった人もいます。遠くにある、汚染されていない井戸まで歩く時間がなく、塩水化した地下水を飲み水にせざるをえない人々もいます。水質検査体制の欠如や水道管の破損等によって、大腸菌による汚染も多くみられており、インドでは毎年10万人以上の人が水を媒介とする病気で亡くなっています。
参考資料:NITI Aayog 2019 “Composite Water Management Index”
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支援の現場から~"ヒ素汚染地帯 "での厳しい生活
インド北部ビハール州ブクサル県、ガンジス河畔にある小さな村に住むデヴァンティさんは、10年前に手に硬い発疹が2つ3つできたとき、いずれ自然に治るだろうと思っていました。しかし今、デヴァンティさんの手と足の裏には発疹がびっしりとでき、発疹が原因で「小さな尖った石の上を歩いているような感じです」と言います。5人の子供たち、夫を含む家族も、消化不良、腹部膨満感から激しい胃痛まで、さまざまな慢性的な胃の病気に悩まされるようになり、その原因は井戸水であることが判明したのです。
インドのガンジス川流域周辺は、地下水のヒ素汚染が広がる地域として知られており、ビハール州もその地域にあたります。ビハール州の州都パトナにあるがん研究機関が、デヴァンティさんが住む地域の水サンプルを複数検査し、汚染状況の実態を確認したところ、この村のほとんどの水源で有毒なレベルのヒ素と鉄の汚染があることが明らかになりました。ヒ素と鉄分を過剰に含有している水を飲用、調理、畜産、農業に使用していたため、時間の経過とともに、ガンや角化症(デヴァンテさんがかかった皮膚病)のような皮膚病が異常に増加しただけでなく、牛乳や燃料に使われる牛糞にまで汚染物質が蓄積していました。
デヴァンティさんとその家族は、飲料水や牛乳から知らず知らずのうちにヒ素を摂取していただけではなく、燃料として使っていた牛糞の煙からもヒ素を吸い込んでいたことが分かりました。このようにヒ素を多く含む煙を吸い込むことは、ガンや重度の肺疾患を発症する長期的リスクにさられていることを意味します。さらに、医師たちはヒ素にさらされつづけることがDNA損傷の可能性を高めることに懸念を示しています。鉄分による水質汚染についても、水に含まれる鉄分は悪臭を放ち、台所用品には黄赤色の垢がしみついてしまうほどなのです。
デヴァンティさんは「次の世代へこの有害な水の影響を引き継ぎたくありません。 だから、2500ルピーで(ウォーターエイドではない別の)NGOが浄水器を設置してくれたときには、安心しました」と語ります。しかし、この方法では、ヒ素やその他の不純物が大量に堆積し、頻繁に詰まってしまうため、一時しのぎの効果しか得られませんでした。ほかにも、政府が村に「水のATM」を設置したのですが、それも定期的なメンテナンスが必要なために使えなくなってしまったということもありました。
このような状況ある村にきれいな水とトイレのしくみを導入するウォーターエイドのプロジェクトは、デヴァンティさんたちに希望を与えています。「これで健康も、生活水準も、平均寿命も改善されるでしょう。今、薬に費やしているお金も節約できるし、もっと働けるようになるかもしれません」と言います。何よりも、汚染された水を飲むことに、日々不安を抱えていたデヴァンティさんは、安全な水によって平穏に暮らすことができる日を心待ちにしています。
ウォーターエイドジャパンはこの夏、深刻な水・衛生危機に直面しているインドの人々の「夢」を叶えるため、皆さまにご寄付を呼びかけています。デヴァンティさんのように、安全な水を切に願う人々に水と希望を届けるため、夏募金に、どうかご協力をお願いします。