【活動レポート・ブログ】新型コロナウイルス感染症に関する世界の状況とウォーターエイドの対応:2020.06.15版
世界の状況:感染者は約760万人、1日あたり10万人以上の増加
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界で確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は約760万人で、この2週間で約170万人増加しました。1日あたり10万人以上の増加です。感染者は215の国と地域で確認されています。
感染者数を国別にみると、アメリカが約200万人、ブラジルが約80万人で、この2カ国で世界全体の感染者数の半数近くを占めています。インドの感染者数は約30万8,000人で、ロシアに次いで、世界で4番目に多い感染症者数となっています。イギリスは感染者数ではインドより少ないものの、新型コロナウイルス感染症によって亡くなった人の数ではインドが約8,800人なのに対し、イギリスは約4万1,500人となっています。
ブルンジのピエール・ンクルンジザ大統領が6月8日に亡くなりました。新型コロナウイルス感染症で治療を受けていたという報道もあり、事実とすると、新型コロナウイルス感染症により死亡した初の国家元首となります。ブルンジは新型コロナウイルス感染症に関するロックダウン(都市封鎖)や規制措置を実施していませんでした。 ジョンズ・ホプキンス大学がデータの収集を開始して以来、約350万人が新型コロナウイルス感染症から回復しています。
予防接種の資金確保へ世界ワクチンサミットも開催
世界で最も厳しいロックダウン措置を講じていたニュージーランドは6月8日、2週間以上、新たな感染者は確認されず、国内の感染者はゼロになったと宣言しました(その後、新たな感染者が確認されています)。オーストラリアもまた、新型コロナウイルス感染症をほぼ完全に排除したとし、コンサートやスポーツイベントで観客を入れることを許可し、7月から留学生が帰国することを認めると発表しました。
多くのヨーロッパ諸国も国境を再び開放し始めていますが、当初は他のヨーロッパ諸国からの入国者のみを受け入れています。一部の国では入国に際して健康に関する証明書が必要で、自己検疫を求める国もあります。いくつかのEU加盟国は、他の地域からの受け入れも決定しました。
経済協力開発機構(OECD)は、ロックダウンなどの影響により、世界経済が今年少なくとも6.6%縮小し、その影響は貿易相手国や対外援助にも及ぶと予測しています。
開発途上国での予防接種の普及に取り組む国際的な官民パートナーシップ「Gaviワクチンアライアンス」の資金確保のため、イギリス政府が主催する「世界ワクチンサミット」が6月4日に開かれました。新型コロナウイルス感染症の拡大を最小限に抑えるためにも、予防接種に合わせて正しい衛生習慣を広めていくことは重要です。
イギリスの科学誌ネイチャーに掲載された2つの論文は、世界各国でのロックダウンは、何千万人もの人々の新型コロナウイルス感染症を予防し、ヨーロッパ11カ国で310万人以上が命を落とす事態を防いだと指摘しています。
ウォーターエイド活動国の状況
ウォーターエイドが活動している国のほとんどで、引き続き、新たな感染者が報告されています。ただし、カンボジア、東ティモール、パプアニューギニアは「感染者ゼロ」を宣言しています。 タンザニアでは、4月29日以来、政府から感染確認の報告はなく、政府は「感染者はほぼゼロ」と宣言しています。しかしながら、タンザニア国内では相当数の感染者と亡くなった人がいると広く信じられていて、政府を批判したいくつかのメディアが活動休止となりました。
アフリカ:感染者数は倍以上に増えるも各国で規制は緩和
報告された感染者数は、2週間前の約10万人から、2倍以上の約21万6,000人に増加しました。感染者数が最も多いのが南アフリカで、約6万2,000人です。アフリカ疾病予防管理センター(アフリカCDC)によると、ガーナとナイジェリアの感染者数はいずれも1万人を超えています。
感染が加速しているにもかかわらず、多くの国の政府はロックダウンなどの規制を緩和し、学校、企業、商店の再開のための準備をしています。
ウガンダでは、公共交通機関の制限は緩和されましたが、車両あたりの乗客数が制限され、運賃は3倍になりました。交通渋滞も発生し、政府は再度のロックダウンの検討を促されています。ルワンダでも、感染者の増加を受け、再度のロックダウンが議論されています。シエラレオネでは、参加者がマスクをすれば宗教的な活動を行うことができ、100人以下であれば人々が集まることも認められています。
マリ、ブルキナファソ、ニジェールでは学校が再開されましたが、すでに学校が再開されていたセネガルでは、教員の間での感染の発生を受けて再び休校が指示されました。
エチオピアとマラウイでは、検疫所にいた人々が、衛生状態が悪いために逃げ出したという報告があります。
アジア太平洋:インドやパキスタンで感染者の増加が続く
インドでは一貫して多くの感染者が報告されていて、感染者数は累計で約30万8,000人となっています。11,000人以上の新たな感染者が報告された日もあります。亡くなった人は約8,800人で、2週間で2倍以上になりました。県境を越える移動は依然として制限されていますが、政府は6月1日からロックダウン措置を緩和しました。
規制を緩和したパキスタンでは、新たな感染者が急増し、世界保健機関(WHO)は再度のロックダウンを強く求めています。パキスタンの感染者数は約125,000人、バングラデシュは約81,000人で、両国とも2週間で、感染者数が倍になりました。ネパールでは感染者数が約5,000人と報告されています。
ウォーターエイドの各国での活動
各国のウォーターエイドのチームは、必要不可欠な手洗い設備と衛生に関する知識・情報をコミュニティに届けるため、活動と努力を続けています。しかし、どの国においても状況は常に変化していて、安全を確保しながら現場での支援活動を続けることは容易ではありません。ウォーターエイドは引き続き、安全確保と支援継続を両立される方法を模索しなから、活動を続けていきます。
南部アフリカ:著名人と協力して呼びかけを効果的に
ウォーターエイドの南部アフリカチームは、新型コロナウイルス感染症への対策として、清潔な水、適切なトイレ、正しい衛生習慣に必要性を広めるため、シドニーオリンピック(2000年)女子800メートルの金メダリスト、マリア・ムトラさんと協力しています。ムトラさんは、1980年代末から2000年代前半にかけて活躍。1996年のアトランタオリンピックでも女子800メートルで銅メダル、1993年、2001年、2003年の陸上の世界選手権(世界陸上)で金メダルを獲得しています。
エスワティニでは、人気コメディアンのスモールズ(Smallz)とのコラボレーションで、約4分間のコメディのビデオを制作しました。このビデオでは、ごみを適切に管理することや表面を消毒すること、流水で20秒以上、手を洗うことなどが新型コロナウイルス感染症を防ぐために有効であることなどを伝えています。南アフリカの非営利メディア「NEW FRAME」によると、Smallzは、ユーモアの中に教育的なメッセージを盛り込むことで知られ、NGOや企業と一緒に活動することも多いそうです。
ナイジェリア・シエラレオネ:衛生習慣を変えるキャンペーンを展開・支援
ナイジェリアでは、これまで取り組みを実施していない4つの州を対象に、衛生習慣を変えるためのキャンペーンを実施するとともに、保健センター、市場、官公庁に非接触式の手洗い設備の設置を進めます。
シエラレオネでも、衛生習慣を変えるための情報をコミュニティに配布しています。また、政府によるコミュニティでの衛生促進の取り組みにも協力しています。
リベリアでは、検疫所に500の衛生用品セットを提供しました。また、うち1カ所の検疫所には手洗い設備を設置しました。
ブルキナファソでは、保健医療施設や学校での水・衛生環境の改善に力を入れています。ハンドポンプ(手押し井戸)の設置や衛生用品セットの提供などを進めています。
ルワンダ・ウガンダ:国境や回廊の感染防止でJICAと連携も
ルワンダとウガンダでは、両国の国境を通過するトラックの運転手の新型コロナウイルス感染が報告され、ウォーターエイドは、国境地帯における手洗い設備や手洗いのための衛生用品の設置、感染を防ぐ方法の案内などの支援を検討してきました。
この対策の一環として、ウォーターエイドの東アフリカチームは、東アフリカ共同体(EAC)とともに、国境地帯や主要輸送回廊に沿って、手洗い設備などの水・衛生環境の整備を進めるため、日本の国際協力機構(JICA)にプロジェクトの趣旨・概要をまとめたコンセプトノートを提出しました。
ネパール:DFIDとユニリーバが協力の大規模キャンペーン開始
ネパールでは、イギリス国際開発省(DFID)とユニリーバが資金を提供する衛生習慣を変えるためのプロジェクト(Hygiene Behaviour Change Coalition project)が正式に始まり、「クリーンファミリー、ハッピーファミリー」を宣伝するビデオを公開しました。このプロジェクトは、DFIDとユニリーバがそれぞれ5,000万ポンド(約66億円)を拠出し、世界中で10億人を対象に、手洗いの大切さを伝え、石けんを使ってこまめに手を洗う習慣を身に付けてもらうことを目的に実施されます。開発途上国など衛生環境が整っていない国では、衛生用品の配布も行います。この取り組みにより、途上国での新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぎ、世界経済や移動、他国への影響も低減することも目指しています。
ネパールでは、ネパール政府がプロジェクトをリードし、ウォーターエイド・ネパールが協力して、全国的なキャンペーンを展開します。そのプロジェクトの最初の取り組みの一つとしてパネル・ディスカッションが行われ、その模様が現地のテレビやラジオ、ウォーターエイドのYouTube、Facebookで中継・配信されました。
パキスタンでは、「衛生習慣を変えるための連合」プロジェクトの一環としてユニリーバから石けんを受け取りました。
カンボジア:障害者支援のNGOと協力、障害者・介助者ら向けのビデオ
カンボジアでは、障害者や障害者と接する機会のある人、介助者などに向けて、新型コロナウイルス感染症を予防するための情報や、障害者や介助者が気を付けなければならないことをまとめたビデオを制作し、FacebookやYouTubeなどで発信を始めました。
これは障害者支援の国際NGOであるHumanity & Inclusion(旧Handicap International)とウォーターエイドによる共同の取り組みで、使用する装具や機器なども含めてこまめに殺菌・消毒することや、介助者らがしっかり感染防止に努める必要があることなどを紹介しています。
イギリス:ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院のCOVID-19衛生ハブに情報提供
ウォーターエイド・イギリスは、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)のCOVID-19 衛生ハブに、衛生習慣を変えるための支援に関する情報提供を行いました。衛生ハブは、低・中所得国を対象に、新型コロナウイルス感染症に対処するための情報を発信しています。