【活動レポート・ブログ】すべての人に水・衛生を届ける「しくみ」の強化:「SusWASH」プログラム

ウォーターエイドは、カンボジア、エチオピア、ウガンダ、パキスタンの4か国において、すべての人に水・衛生を届ける「しくみ」づくりに取り組むプログラム「SusWASH(持続可能な水・衛生)」を実施しています。このプログラムを通して得た経験や学び、提言をまとめた新しい報告書について、ウォーターエイド・イギリスのハナ・クライトン=スミスとヴィンセント・ケイシーがご紹介します。
ウォーターエイドは、カンボジア、エチオピア、ウガンダ、パキスタンにおいて、各国・地域のすべての人が、水・衛生を持続して利用することを可能にする「しくみ」の強化を目指す取り組みを進めています。これは「SusWASH」というプログラムの一環で、H&M財団から支援を受けて、2017年から2022年の5年間にわたり活動しているものです。
「SusWASH」プログラムは、各国の水・衛生の状況や課題、しくみを詳細に分析したうえで設計しているため、国ごとに内容が異なります。また、このプログラムでは、グローバルレベルで学びの共有や軌道修正を行うほか、技術的な支援も取り入れています。
カンボジア、エチオピア、ウガンダ、パキスタンにおけるしくみ強化
カンボジアでは、地方の水・衛生の改善に焦点をあて、国・州レベルでのモニタリング(水・衛生データの収集・管理)と水・衛生の改善計画策定のプロセスを改善しています。それによって、地方政府が、トイレ・衛生設備の普及と給水サービスの維持管理という役割と責任をきちんと果たすよう支援。また、取り残されがちな人々が、水・衛生へのアクセスで直面している問題を、政府のリーダーたちに自ら共有し、改善を求める、といった活動も後押ししています。
エチオピアでは、都市部から離れた農村部における水・衛生改善の計画策定、モニタリングと予算管理を支援しています。ウォーターエイドは、水道事業体などの水・衛生サービスの提供者と利用者間の意見交換の場づくりに取り組みました。また、給水・衛生設備の設置や適切な維持管理体制の構築を通して、小規模都市の水道事業体の能力向上に取り組んだほか、その給水・衛生設備の設置や維持管理体制構築の一連の流れを、「モデル」として、政府や水・衛生関係者に対して示しています。
ウガンダでは、カンパラ首都庁やカンパラ市長、議員たちと連携し、政府のリーダーシップや調整力、透明性の向上に取り組んでいます。ウォーターエイドは、現地の市民社会組織と協力し、取り残されがちなコミュニティの住民たち自身が、自治体の予算配分に対して働きかけるようサポート。水・衛生環境の改善に向けて、住民が積極的に声を上げるよう支援しています。さらにウォーターエイドは、学校と保健医療施設において、水・衛生設備の設置や適切な維持管理体制を構築。この取り組みの手法や成果を、学校と保健医療施設における水・衛生の改善手法のモデルとして、政府や関係者に示しています。
パキスタンでは、州や県レベルで、政府のリーダーシップや調整力、透明性の向上に取り組んでいます。ウォーターエイドは、州レベルでの学校の水・衛生サービスのモニタリングを改善。また、水・衛生に関する教員向け研修マニュアルや教育カリキュラムを開発し、教職員や生徒による水・衛生の理解を深めるよう努めています。
これまで確認された「SusWASH」の成果
水・衛生に関わるしくみ全体の強化には時間を要しますが、2017年4月に「SusWASH」が始動して以降、すでに多くの良い変化が起きています。
- カンボジアでは、関係省庁による国や州の水・衛生行動計画の見直しが進んでいます。最新の水・衛生データに基づいて行動計画が更新されるほか、同データは、予算編成の際にも活用されています。
- エチオピアでは、県の水・衛生計画の予算規模が算定されたことが、水・衛生分野の取り組みに充てられる追加資金の確保につながりました。
- ウガンダでは、カンパラ市の下水・し尿汚泥処理・管理に関する規制を改善する条例が、カンパラ市議会で可決されました。
- パキスタンでは、州の学校管理情報システムに、学校の水・衛生状況を随時把握し測定する指標が加えられ、政策決定の参考になっています。
しくみ強化の経験をまとめた報告書
ウォーターエイドはこのたび、報告書「System strengthening for inclusive lasting WASH that transforms people’s lives: practical experiences from the SusWASH programme(人々の生活を変える、インクルーシブで持続的な水・衛生のためのしくみ強化:SusWASHプログラムにおける実経験)」を公開しました。この報告書の内容は、以下のとおりです。
- 水・衛生のしくみ強化と「SusWASH」プログラムの背景
- 企画・立案、変化の確認、学び、そして適応の各プロセス
- 実施国4か国における、現在までの活動、活動によって生じた変化、教訓などの事例
- 総括的な教訓、提言および今後の展望
この報告書は、水・衛生のしくみ強化に携わる、または関心のある実務者、ファンドレイザー、政府関係者、ドナー関係者向けに作成しました。しくみ強化の取り組みが、すべての人の持続的な水・衛生へのアクセス、さらに持続可能な開発目標(SDGs)のゴール6の達成に貢献する手法として、世界の水・衛生セクターのなかで広がっていくことを期待しています。
この記事は、ウォーターエイド・イギリスの持続可能な水と衛生アドバイザーのハナ・クライトン=スミス(Hannah Crichton-Smith)、および水と衛生シニアマネージャーのヴィンセント・ケイシー (Vincent Casey)のレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)