【活動レポート・ブログ】バングラデシュ:気候変動の影響をもっとも受ける人々に希望と安心を

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Image: WaterAid/ Fabeha Monir

バングラデシュに住む多くの人々にとって、気候変動はどこか遠くで起きている話ではなく、日々の暮らしに直接的な影響をもたらしている非常に深刻な課題です。実際、バングラデシュは、異常気象の影響をもっとも受ける国の第7位(ジャーマンウォッチの気候リスク指数2020による)にランクされており、鉄砲水、豪雨、年間を通じた気温上昇、海面上昇による地下水の塩化に直面しています。気候変動の影響は、絶えず、住処を失い移住を余儀なくされる人を生み出し、限られた資源を奪い、壊滅的な状況を引き起こしています。気候変動の影響を受けやすい地域に暮らす人々、とくに少数民族等の適応力が限られているコミュニティにとって、状況はさらに深刻なものとなります。このように、気候変動によって、本来は誰もが保証されるべき、きれいな水を利用して、衛生習慣を徹底し、トイレなどの衛生システムがある暮らしを送ることはますます難しくなっています。このブログ・レポートでは、現地の人々が気候変動からどのような影響を受けているかを動画を交えながらお伝えします。

 

気候危機の中で生きるということ

「その年は、私が学校に通った最後の年になりました。土地のほとんどは失われ、家も壊わされました。コミュニティ全体に甚大な打撃を与えました。私たちは以前より貧しくなりましたが、耐え続けました。以来、他に行き場所がないので、私たちは川岸で暮らしています」

 

水を求めて歩く、長く不安定な道のり

毎日、朝と昼の水くみの混雑時間になると、井戸の前に水くみ用の水差しを持ったコミュニティの人々が長い列を作り始めます。井戸の水をくみ、運ぶのは多くの場合、女性や少女たちで、彼女たちは岩だらけの道を上り下りして、水くみのために歩きます。

 

サイクロンの音

「私は目が見えないけど、耳が聞こえないわけではありません。雷鳴やサイクロンの音を聞くと、命の危険を感じます。人々の悲鳴が聞こえ、物が崩れていく-何か恐ろしいことが起こっているのがわかります。見えないけれど、その恐怖のなかで生きています」

 

荒ぶる水

「鉄砲水は私たちの水田を荒らし、毎年莫大な収量の損失をもたらします。私は過去に被った損失を補うために牛を売らなければなりませんでした。このような損失に直面して農業をあきらめた農民も多く、地元のジャドゥカタ川で石炭を採り始めたり、日雇い労働の仕事を求めて町へ出稼ぎに行ったりする人もいます。私たちの多くにとって、こうした借金や負債の重荷はおそらく一生続くでしょう」

 

水の上を歩く―見えない重荷

「あの夜、私たちはすべてを失いました。家の壁や屋根は壊れ、安全な水は飲めなくなり、食べ物も手に入らなくなり、トイレもなくなり、寝る場所もありませんでした。辺り一帯が浸水し、すべてが水面下に沈みました」 

ウォーターエイドは、気候変動の影響に対応できる強靭で持続可能な水・衛生のしくみを構築することが重要だと考えています。そうすることで、干ばつや洪水などの異常気象に直面しても、コミュニティの人々が大きな被害を被ることなく、安心して生活を続けていくことができるからです。

 

清潔な水・トイレが人々に安心と希望をもたらす

2021年より、ウォーターエイドが沿岸部に位置するカリガンジ郡のコミュニティで実施したプロジェクトでは、65,000リットルの雨水貯留設備ならびに男女別のトイレ設備3基を設置するとともに、衛生習慣の改善促進を行いました。このコミュニティに暮らす30世帯(男性70名、女性65名)の多くは、漁業と農業に従事しています。プロジェクト実施前は、毎日2~3時間かけて水をくみに行き、豪雨や洪水で浸水したトイレを使うのが当たり前の暮らしでした。鉄砲水のときには、最大60㎝程浸水し、熱帯サイクロンの時期には激しい高潮や強風に見舞われ、悪化し続ける地下水の塩化等、異常気象による深刻な被害を受けていました。

そんなコミュニティにとって、安全な給水設備とトイレが自宅のそばにあることは、大きな安心をもたらしています。

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Image: WaterAid/ Fabeha Monir

この村に暮らすビシャカさんは次のように話します。
「まるで新しい人生を生きているようです。先月、はじめてトイレを使い始めたとき、私たちの暮らしは一変しました。日常的に衛生的なトイレを使うことは私たち家族にとって初めてのことです。男女別のトイレを使えることは安心をもたらします。夜にトイレを使うことも怖くありません」

「私たちのコミュニティの人々は、みな川や池などで魚をとって生活しており 、収入は少なく、教育や社会的地位の点で、他の人たちよりもずっと遅れをとっています。コミュニティの外の人々は、私たちを対等な人間として見ていません。ウォーターエイドの現地パートナーが私たちの地域にトイレを建設し始めたとき、私たちは安心と希望を感じました」

この冬、ウォーターエイドは、バングラデシュの人々をはじめ、今まさに気候変動の影響を受けている人々に命の源である清潔な水を届けるため、そして安心と希望を届けるため、冬募金へのご協力を呼びかけております。気候変動の影響で、人々が水やトイレを失い、命の危機にさらされることがないように、ウォーターエイドの活動にご協力をお願いいたします。

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