【活動レポート・ブログ】ネパール:地震被災の地域で「水のある生活」を実現
ネパール東部のカブレ郡は、2015年4月に発生した地震で、300人以上が命を落とし、3万7,000戸以上の家が完全に崩壊するなど大きな被害を受けました。このうち、チャウリデウラリ村(Rural Municipality)は地震の前から水の問題に悩まされてきましたが、地震後、水源が枯れてしまい、住民の状況はさらに厳しくなりました。ウォーターエイドはこの村で、住民とともに給水設備を整備し、村の生活は大きく変わりつつあります。その取り組みと住民たちの声をご紹介します。
地震前も清潔な水は使えず、地震後は水源が相次ぎ枯渇
地震前、村の人たちは、小川から水をくんでいました。川の近くに設置したタンクが唯一の設備でした。村に住むチャンドラさんによると、「ろ過のような仕組みは一切ありませんでした。ただ、パイプに網を付けていたので、虫の死がいや葉っぱが水に入ることはありませんでした」。 地震の後、その小川の水は枯れ、村は深刻な水不足に陥りました。水を求めて、あちこちへ行きました。それには1時間あるいはそれ以上かかりました。一時、村の人々は、別の小川の水を何とか引いてきたのですが、4カ月後、その水もなくなりました。「多くの人が使ったので、水がなくなってしまったんだと思う」とチャンドラさんはいいます。
こうした状況を受け、ウォーターエイドは、この村を対象に、地元団体と協力し、HSBCの支援も得て、「コミュニティ主導の回復力と持続可能性を持った水・衛生プロジェクト」に取り組みました。給水網を復旧し、新たに3つの給水網を建設しました。これには7つの自然流化式の給水網と1つのポンプを使った給水網が含まれます。また、とくに困窮している60以上の世帯の洗い場の建設・改善を行い、4つの学校で水・衛生設備を改善しました。
衛生習慣や女性の月経衛生の知識などの普及も重視したほか、水管理に関する技術の建設、給水設備を対象とした保険、学校を基盤とした防災計画づくりも進めました。こうした取り組みを通じ、災害や感染症の流行などに見舞われてもコミュニティがコミュニティ自身の力で対処し、回復できる力をつけることを目指しました。
集中して試験勉強、家庭菜園で野菜づくり、何よりは入浴
給水用のパイプを敷設する工事は住民参加で行われ、それぞれの家にも水が届き始めています。そして、それは生活を大きく変えています。
12年生(日本の高校3年生に相当*)のレカさんは、こう話します。
「(私の家の)蛇口から水が流れるのは1日に2回です。それでも私たち家族にとっては十分です。生活がすごく快適になりました。とくに最終試験(全国統一試験*)の期間中は助かりました。水を運ぶことを考えなくてよくなったので、勉強に集中することができました」
「家に水があるので、家事を時間内に終わらせることができます。以前は水くみのために時間が取られ、出歩くことも好きなことをする時間もありませんでした」
家の掃除も楽になったとレカさんはいいます。洗濯もずっと簡単になりました。トイレもきれいです。一度使った水は、家庭菜園で野菜を育てるためにも使っています。
大きく変わったことの一つは、入浴です。「以前は、家からずっと離れた水場に行っていました。だれに見られるか分からない屋外での入浴がどんな気持ちか、想像できますか。全然落ち着かないです」(レカさん)。
毎日は学校に行っていなかった子供たちは、毎日、学校に行くようになりました。子供たちの健康状態もよくなりました。
チャンドラさんは、家の蛇口から水が飲めるようになる日を心待ちにしていました。「家に水があれば、生活はすごく楽になります」「一番いいのは、清潔な水を飲めることで、それによって私が健康な生活を送ることができるようになります」
次回は、村の住民が参加した水道の建設について、お伝えします。
【支援の現場から】ネパール:水・衛生環境の整備でコミュニティが作業に従事