【支援の現場から】パキスタン:mWater導入で全国のデータもコミュニティの状況も一目で分かるように

on
2 October 2020
Qadeer Khan member of Orangi Pilot Project Research and Training Institute (OPP-RTI) mapping team working in the office on a map for urban sanitarian project in Karachi, Sindh province, Pakistan. April 2015.
WaterAid/ Asad Zaidi

水・衛生の改善のためには、それぞれの地域の状況を正しく把握し、具体的にどこで水が不足し、どこの設備が故障しているのかなどを把握し、その分析をもとに政策・計画を決定することが重要です。そのためのデータ管理が重要ですが、システムが使いづらかったり、データの意味するところが分かりづらかったりすると、システム活用の効果は限定的なものになってしまいます。ウォーターエイドは各国で、水・衛生のデータを管理するオンラインデータプラットフォーム「mWater」の活用を進めています。パキスタンではパートナーとの対話も通じてシステムを改善し、データの把握や分析で成果を上げています。

 

導入前:複数年のデータが見られず、入力ミスの対策もなし

mWaterの導入前、ウォーターエイド・パキスタンでは、水・衛生の状況のモニタリングやデータ管理には、表計算ソフト「エクセル」を使用していました。しかし、エクセルによる管理には、データ入力時のチェックシステムがないことなどのために、コミュニティやユーザーの月次データが二重にカウントされたり、コミュニティや機関名の表記の間違いなどでデータの整合性がとれなくなったりする問題がありました。また、複数年にわたるデータベースを構築することが困難でした。

一番問題だったのは、エクセルの場合、せっかく入力したデータやその集計結果が複数のシートにわたり、それらを集約して見ることができないことでした。エクセルを使いこなすことができるスタッフでなければ、データを読み解くことができず、そのためデータを日常的なプロジェクト管理に活用することができませんでした。

 

パキスタン・シンド州タッタ県で、ウォーターエイドが設置した手押しポンプで水をくむ女性。水・衛生の改善を進めるには正確なデータの把握が欠かせな
WaterAid/ Sibtain Haider
パキスタン・シンド州タッタ県で、ウォーターエイドが設置した手押しポンプで水をくむ女性。水・衛生の改善を進めるには正確なデータの把握が欠かせな

導入後:目標と実績と同じ画面に表示、データ入力も効率的に

各国で水・衛生に関するデータ収集・管理に同様の課題が生じていたことから、ウォーターエイドは2014年に、mWaterの活用を開始しました。

mWaterは、水・衛生に特化したオンラインプラットフォームで、モバイル端末を使ったデータ収集や分析、共有を容易に行うことができます。ウォーターエイドは2000年代初めから、利用者が水くみ場や水の利用場所、利用状況、水質などを入力し、地図で確認できる簡易な地理情報システム(GIS)ソリューションなどの開発・活用を進めてきましたが、さまざまなシステムを検討した結果、卓越した技術や、水・衛生分野に特化した誰でも利用できる無料のプラットフォームを確立していること、開発のための共同資金調達モデルがあること、水・衛生に関する豊富な専門知識も持っていることなどから、mWaterと連携。それまで支援し開発に携わったすべての技術を、すべてのmWater利用者が使えるようにしました。そして、地図や各種のグラフなどを容易に作成して、共有できるようにしました。

ウォーターエイド・パキスタンもエクセルからmWaterに切り替えることに決定し、それに合わせて、以下のような目標を設定しました。

  • ウォーターエイドのプロジェクトに必要なデータ、外部(政府などウォーターエイド以外)のステークホルダーが必要なデータ収集に生じる重複作業を減らす。
  • 活動と成果に関連するデータを適切に確認できるようにする。それにより、事業を進めているチームをサポートする。
  • データを、性別や場所、ドナー(資金提供者)、パートナー、プロジェクト、資金ごとに集計できるようにする。
  • データ入力時の人為的なミスや不一致を減らす。
  • データのセキュリティを強化し、アーカイブ化によって複数年にわたるデータを確認できるようにする。
  • さまざまなユーザー向けに、それぞれの目的に合わせて、データを集計・分析して表示することができる画面(ダッシュボード)を開発する。

この目標に加え、ウォーターエイド・パキスタンでは、以下のような工夫をしました。


mWaterは、活動状況の確認、利用者の数、設備を整備した記録など、さまざまな目的に活用されます。しかし、データ入力の機能を一か所に統合し、一方で、利用者ごとに必要な項目だけが表示されるようにしました。


データのモニタリングと分析をするシステムでは、全体像と、数字が表しているものの意味を示すことが重要です。したがって、ダッシュボードに、目標と実績の両方を表示することが重要だと考えました。

すべてのプロジェクトについて詳しい実施計画を立て、プロジェクトリーダーと協力して月ごとの数値目標を設定しました。事前にこの目標をmWaterに入力し、実績の数字とともに目標の数字を表示するようにすることで、ダッシュボードを見る人がプロジェクト全体の進捗状況を把握できるようにしました。

目標と実績を合わせて表示するmWaterのダッシュボードのイメージ。左から、トイレ利用者数の目標と実績、衛生設備の利用者数の目標と実績。
目標と実績を合わせて表示するmWaterのダッシュボードのイメージ。左から、トイレ利用者数の目標と実績、衛生設備の利用者数の目標と実績。

パートナーとの対話から地元密着の機能も追加

日常的に、このmWaterを使うのは、現地のパートナー団体です。ウォーターエイド・パキスタンでは、パートナーたちが新しいシステムを理解し、受け入れ、活用を支持してくれるかどうか、確認を続けました。パートナーを個別に訪問し、ヒアリングを行い、課題を確認しました。その結果、主な課題はコミュニティなどの地区レベルで進捗状況を確認するための統一的なプラットフォームがないことだと判明しました。

そこで、ウォーターエイドは、パキスタン全国のデータを統合して表示させるダッシュボードに加えて、コミュニティなどの地区レベルでデータを表示するパートナーごとのダッシュボードを開発。各パートナーに調査方法を理解してもらうため、使用方法を個別に説明しました。パートナーの現地チームもすべてのデータを1か所で確認できるようになり、プロジェクトの計画、モニタリング、計画実施の改善に役立っています。

mWaterは、現場でのヒアリングや改善の取り組みもあって、より効果的なものとなり、プロジェクトやコミュニティに利益をもたらすものとなっています。

 

関連レポート
オンラインデータツール「mWater」活用で水・衛生の状況を可視化

 

このレポートは、ウォーターエイド・パキスタンのモニタリング・評価コーディネーターであるサビル・フセイン(Sabir Hussain)のレポートを、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルはこちら(英文)