【支援の現場から】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の中心に平等と人々の権利の視点を

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17 April 2020
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WaterAid/ De Sharbendu

社会の中の最貧困層や最も力の弱い人たちは、危機的な状況下において最も深刻な影響を受ける可能性があります。しかし、対策を講じることでその不平等を緩和することができます。水・衛生と緊急時における不平等への取り組みについて、ウォーターエイドの考え方をご紹介します。

ジェンダーの不平等は危機で悪化する

学校が休校になり都市が封鎖されると、育児介護・家事の負担が大幅に増加します。手洗いや掃除、衛生を保つために、必要な水の量も増えます。不足分の水をくみ、より多く労働し、病気になった人の世話をするのは、多くの場合、女性と女の子であるのが実態です。

世界の29%の人々は家の中で水を使えません。サハラ以南のアフリカでは最大73%の人が使えません。そうした人々が水をくみに行く回数が増えることは、給水設備や水の販売所で他人と接触する機会が増えることを意味します。そして多くの人にとっては、高額な水を購入することで、すでに苦しい家計がさらに苦しくなります。

インドのハイデラバード市、アンナナガー・バスティにある給水設備で水をくむために並ぶ女性たち
WaterAid/ Ronny Sen
インドのハイデラバード市、アンナナガー・バスティにある給水設備で水をくむために並ぶ女性たち

世界全体で保健医療や社会福祉の分野で従事する人の70%が女性と推定されています。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、これらの最前線で働く人たちはプレッシャーとウイルスにさらされる危険に直面し、多くの場合、個人用の保護具も不足しています。世界の保健医療施設では5つのうち2つに手洗い設備がなく、また、後発開発途上国の保健医療施設では、その55%で基本的な水を利用できるような設備がありません。

保健医療の危機は、第一線の医療従事者、特に女性看護師への暴力やハラスメントのリスクを高めます。世界保健機関(WHO)の報告によると、エボラ出血熱が流行中のコンゴ民主共和国では2019年に300以上の保健医療施設への攻撃が発生し、6人の医療従事者と患者が死亡、70人が負傷しています。

多くの公共施設が強制的に隔離、閉鎖されている間、月経中の女性や女の子が、コミュニティや家庭で適切なケアをできなくなる可能性もあります。ほとんどの時間を室内で家族と過ごすため、生理用品を洗ったり交換したりするための清潔でプライバシーを保てる場所を確保することや、生理用品や水を使うことが難しいからです。

隔離措置や、従来同様の社会支援サービスが受けられないこと、経済的ストレスやその他のストレスの増加により、あらゆる場所で女性に対する暴力のリスクが高まっています(*1)。このことは水・衛生に直接関係しているわけではありませんが、女性が必要不可欠なサービスを利用することに影響しており、水・衛生やその他のサービスにアクセスするときの安心と安全を確保するためにも、対策に取り入れる必要があります。

危機下では疎外された人々はさらに脆弱になる

HIV/エイズやその他の慢性的な健康上の問題を抱えている人の多くは、新型コロナウイルスに感染する恐れが高まる前から、その病気などを理由に差別や偏見を受け、社会的な排除を経験しています。HIV/エイズに関する誤解や一般的な差別により、以前から共同の水・衛生施設が利用できない場合は、危機により状況が悪化し、手洗いと治療の継続がさらに困難になる可能性があります。また、重要な救命サービスの中断という現実的なリスクにも直面していて、新型コロナウイルスの治療を他の人と同じように受けられるのかという懸念もあります。

世界中で10億人以上の人々は何らかの障害を抱えて暮らしており、低所得国や貧困層、少数民族の集団では障害者の割合が高くなっています。このような人々が以前から直面している保健医療と社会の不平等は、危機によって悪化します。身体的な障害のある人がこまめに清潔な水を利用しようにも、利用できる場所と離れていたり、設備が利用できなかったり、他の人のサポートが必要だったりするために、容易ではありません。

障害者は、社会参加の機会が少ないことが多く、社会で活動している人々を対象とした公衆衛生のキャンペーンを見逃すことも多くなります。また、公衆衛生のキャンペーンが、特定の障害のある人々を対象に行われることもほとんどありません。日常生活の多くを介助者とともに過ごしている人は、介助者から新型コロナウイルスに感染するリスクもあり、この困難な状況の中においてこれまで以上に必要な支援を受けられなくなっています。

リベリア・モンロビアの公衆トイレの階段を介助者とともに降りるDisable Camp 17th Street Communityのルーベン・J・ヤンカンさん(左)
WaterAid/ Ahmed Jallanzo
リベリア・モンロビアの公衆トイレの階段を介助者とともに降りるDisable Camp 17th Street Communityのルーベン・J・ヤンカンさん(左)

水・衛生の設備が利用できない人や、その日その日の収入で生計を立てている人、人口密度の高い都市部のスラムや難民キャンプに住んでいる人、路上で生活をしている人は、「屋内に留まるように」と求められても、従うことは非常に困難です。その結果、新型コロナウイルスの感染リスクだけではなく、当局による厳しい処罰の対象となる危険性も高まります。ウォーターエイドはすでに、「消毒」の名目で非公認の市場と住居が強制排除された事例を確認しています。2014年のリベリア・モンロビアでのエボラ出血熱の危機では、「保健上のリスク」とみなされた非公認の居住地全体が隔離されました。これは不当な行いです。

対策を講じることで以前からの脆弱性と今後の脆弱性を軽減

危機的状況下では、最貧困層や最も弱い立場の人々が、最も大きな影響を受ける可能性があります。しかし、次のような対策を講じることにより、私たちは不平等を軽減することができます(*2)。

  1. 政府やその他の水・衛生に関わる機関が、水・衛生は人間としての権利であることを対策の中心に位置づけ、差別なくすべての人が利用できるようにすることを支援する。
  2. 影響を受けているコミュニティを支援するのではなく、影響を受けているコミュニティと共に危機への対策をつくり上げる。これにより、解決策が文化的、社会的、宗教的な課題に沿ったものになる。障害者の権利、女性の権利、先住民の権利などを訴えるグループとの協力は、能力を向上させ、人々を傷付けることなく本当に必要な対策を形作るのに最適である。
  3. 年齢、ジェンダー、人種、民族、社会経済的地位、職業、カーストなど、差別や偏見の問題に取り組み、対策を講じる。メッセージ、写真・映像、アプローチが不用意に差別を助長しないように、注意深く観察する。
  4. 水くみ、水・衛生設備の清掃、正しい衛生習慣の実践が、女性だけではなくすべての人の責任であることを広く伝える。
  5. 政府やその分野の関係者の義務と責任を明確にする。問題の所在を個人の行動や責任にしない。
  6. さまざまなグループごとの影響を理解するために、データの収集とグループごとの分析をする。最低限、年齢、障害、ジェンダー、場所ごとの分析を行う。

新型コロナウイルスの感染拡大に対し、コミュニティ、各国、世界の対応をサポートするためには、既存の知識を活用し、他の人々から学び続けなければなりません。ウォーターエイドでは、これらを行動に移し、新型コロナウイルス対策へ取り入れ、発信・共有していきます。

 

(*1)新型コロナウイルス感染拡大によるジェンダーへの影響についての詳細は、以下のランセットの記事が詳しい。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30526-2/fulltext

(*2)ユニセフの COVID-19 Considerations for Children and Adults with Disabilitiesが詳しい。
https://www.unicef.org/disabilities/files/COVID-19_response_considerations_for_people_with_disabilities_190320.pdf

 

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このレポートは、ウォーターエイド・イギリスの平等・社会的一体化・権利のアドバイザーであるプリヤ・ナースと、水・衛生のシニアマネージャーであるルイーザ・ゴズリングによるレポートの一部を、ウォーターエイドジャパンで編集したものです。オリジナルのレポートには、上記の関連レポートと本レポートの内容が含まれています。オリジナルはこちら 

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